「母親は自由に動くべきである」-豚とその子豚のための分娩住居システムに関する市民の態度

論文概要

 

動物福祉と食料生産における監禁飼育の影響は、研究者、国民、政策立案者の間で長年にわたって議論が高まっている。妊娠ストールと分娩ストールでは、母豚が立ち上がったり横になったりはできるが、向きを変えたり歩行はできないように閉じ込められている。妊娠ストールは妊娠中(約114日)の雌豚を収容する豚の集中生産システムで使用される。分娩ストールは分娩の約1週間前から子豚が離乳するまで雌豚の収容に使用される(通常、生後21~35日の間に設置)、子豚は約4平方メートルの囲い内で母豚のストール周りを動ける。妊娠ストールはいくつかの国と世界最大手食品会社の一部がその使用を禁止。対照的に、分娩ストールは依然として授乳期の雌豚の最も一般的なハウジングである(ブラジル、欧州連合、ニュージーランド、アメリカ)。スウェーデン、スイス、ノルウェーのみが例外として現在分娩ストールの使用は禁止。分娩ストールの現状を変える緊急性の欠如は、本問題の社会的意見に関する研究不足に関連している可能性がある。分娩ストール使用に関する世論を具体的に調査した少数の研究では、世論の反対が示された(ドイツ、ブラジル)。最近では、オーストリア、ドイツ、ニュージーランド、英国で分娩ストール使用に関する政治的議論が浮上し、現在分娩ストールを段階的に廃止する規制が議論または制定されている。 「End the Cage Age」など市民の取り組みにより支持され、欧州議会も2027年までに分娩ストールの使用禁止について議論しているが、多くの国は議論さえ始まっていない。世界最大の豚肉生産国・輸出国の一つであるブラジルでは、政府が2045年までに妊娠ストールを集団飼育に置き換えるなど、養豚福祉の改善を目的とする管理変更を定めた規範規則を発表したが、同文書には分娩ストールは引き続き許可されている。 分娩ストールの代わりに、屋外分娩やルージングペンがある。 屋外分娩により、雌豚は牧場内を自由に歩き回り、巣作り、歩行、ルーティング、放牧などの非常に意欲的な行動が可能だ。英国では、分娩ストールの使用が依然として許可されているが商業農場のほぼ半数の雌豚が屋外分娩システムで飼育されている。代替ルージングペンはでは、雌豚が移動して子豚と触れ合うスペースを提供し、一部のモデルでは巣作り行動も可能だ。
子豚圧死死亡率は、分娩ハウジングの議論の重要な部分を占める。理由は、分娩ストール支持者らは子豚圧死予防にはストールは必要であり、代替システム変更が多くの子豚圧死など子豚福祉の有害を招き、養豚生産者に経済的打撃だと主張しているからだ。子豚圧死は主な離乳前死因だと考えられ、雌豚が子豚の上に横たわっている際に発生し、分娩後初期に最も一般的だ。しかし、幾つかの研究では、子豚圧死予防の分娩ストールの効率性と必要性について疑問が呈され、新生児子豚死亡率はハウジング以外である、分娩管理、出生体重、産子数との関連が要因と示されている。動物福祉問題解決に推奨される代替ハウジングシステムは、分娩ストールシステム変更要求に起因する社会的懸念に対処する必要がり、さもなければ動物産業の長期運営を脅かす可能性がある。
動物の自由な移動を奪う収容システムに国民の反対が明らかであるにも関わらず、分娩ストールは世界中で授乳期の雌豚にとって最も一般的だ。本研究は、3つの分娩ハウジングシステム(「分娩クレート (FC)」、「ルージングペン (LP)」、「屋外分娩(OF)」)に対するブラジル国民の態度の調査を目的とした。ほとんどの参加者は家畜生産に関与しておらず(参加者全体の68%、FCの74%、LPの64%、OFの67%)、他方で、農業環境で育った人(参加者全体の19%、FCの17%、LPの19%、OFの20%)、現在畜産に携わっている農家、専門家、学生として特定される人もいる(参加者全体の13%、FCの9%、LPの17%、OFの13%)。 ほとんどの参加者 (86%) が豚肉を摂取、約半数 (54%) が肉の摂取を重要・非常に重要だと考えた(どちらでもない = 27%、あまり重要ではない/重要ではない = 19%)。 少数の参加者は肉(豚肉、牛肉、鶏肉、魚)をまったく摂取しない(3%)、めったに摂取しない(13%)。他の参加者は少なくとも週に1日は肉を摂取(1~2日 = 18%、3~4日 = 20%; 5~7日 = 46%)。参加者の50%が肉を摂取する際に常に/頻繁に動物飼育方法について考えたと回答(時々 = 25%、数回またはまったく = 25%)。参加者の態度はストールに最も否定的であり、屋外分娩に最も肯定的であった。子豚死亡リスク増加を伴うと知らされたにもかかわらず、分娩ストール使用を圧倒的に拒否、ほとんどがルージングペンへの移行を支持。参加者の意見は、雌豚の移動の自由、行動の自由、自然性に対する懸念と、雌豚を監禁せずに子豚圧死予防ハウジングの開発・管理が可能だという確信により支持された。重要なのは、子豚の死亡を避ける理由において、雌豚の福祉に重要な要素と考えられる自由な移動やその他自然な行動を制限するストールへの収容を正当化する見方がされなかったことだ。分娩ストールの主な代替品であるルーズペンは、参加者が懸念する母豚の自然性や社交性、母性行動など自由な表現に対処できていない。酪農家、産業関係者、科学者を含む養豚業界の関係者には、子豚圧死を避けながら雌豚の自由な移動を可能にする飼育方法を開発する責任がり、多くの関係者が実現できると楽観的な見方を示している。調査結果は、産卵鶏に向けた充実したケージへの支持と同様の理由で、放し飼い分娩ストールに対する国民の支持が予想よりも低い可能性があると示唆している。これまでの研究者らは、一般大衆が最重要と考えている問題に対処しない畜産システム変更は酪農家やサプライチェーン関係者に経済的リスクをもたらすと警告してきた。分娩ストールの維持は養豚産業の社会的ライセンスを侵食する可能性があり、養豚産業関係者や政策立案者は代替分娩システムが社会的支持を得られるよう国民と双方向のコミュニケーションを図る必要があると結論付ける。

 

原文タイトル:“Mothers Should Have Freedom of Movement”—Citizens’ Attitudes Regarding Farrowing Housing Systems for Sows andTheir Piglets

論文著者:Bianca Vandresen and Maria José Hötzel

公開日: 2021/12/02 

論文URL:https://doi.org/10.3390/ani11123439

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