がんのリスクに対して食生活が及ぼす影響

論文概要

 

がんに罹患するリスクと食事パターンの関連を調べた研究は限られており、特にがん全般のリスクとその基礎にあるメカニズムについてはあまり検証されていない。ここでは UK バイオバンクのデータを用いた前向き調査を実施し、「地中海食*1 Mediterranean diet」・「マインド食*2 MINDDiet」の遵守度、がんに罹患する全般的なリスク、個別のがん22種類に罹患するリスクの関連を調べ、さらに代謝物によって媒介される効果についても検証した。

その結果、地中海食・マインド食の遵守度が高いほど、がんに罹患する全般的なリスクが低下することがわかった。このようにがんのリスクが低下する傾向は、地中海食では14種類のがん、マインド食では13種類のがんにおいて特に強かった。続いて行った逐次解析では、Cox回帰・エラスティックネット・勾配ブースティングによるモデルを組み込み、がんに罹患する全般的なリスクと関連する10種類の代謝物を特定した。

媒介分析からは、これらの代謝物が地中海食・マインド食の遵守度とがんリスクの関連に大きく影響しており、こうした影響は個別の代謝物において見られるだけでなく、全体として累積的にも作用していることがわかった。食事パターンと代謝物、がんの発生は複雑に絡み合っており、本研究の結果はこうした関連に対する理解を深めるものである。

*1 地中海沿岸地域の伝統的な食事様式で、野菜・果物・全粒穀物・豆類・魚介類・オリーブオイルなどを多く摂取し、赤身肉の摂取を控える *2 認知症予防を目的とした食事療法で、地中海食とDASH食(高血圧予防の食事療法)の要素を組み合わせたもの

 

原文タイトル:Effects of diets on risks of cancer and the mediating role of metabolites

論文著者:Yi Fan, Chanchan Hu, Xiaoxu Xie, Yanfeng Weng, Chen Chen, Zhaokun Wang, Xueqiong He, Dongxia Jiang, Shaodan Huang, Zhijian Hu & Fengqiong Liu

公開日: 2024/07/13 

論文URL:https://doi.org/10.1038/s41467-024-50258-4

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