イタリアにおける反ヴィーガン・スティグマに関する質的分析

論文概要

 

ヴィーガン食を実践する人を否定的に捉える態度が広く存在することは多くの研究で示されており、反ヴィーガンという思想が存在することを裏付ける根拠となってきた。本研究では、従来のこうした知見をさらに詳しく検証するため、ヴィーガニズムおよびヴィーガンに対するイタリアの社会的認識について調査した。イタリアでは伝統的な食文化が重視されており、集団的アイデンティティと国民の誇りを担う重要な要素となっているが、その一方で近年では食生活の多様化に加え、市民の文化的アイデンティティの変容を促す大きな変化が起きつつある。

19歳から68歳までの参加者156名(女性85名)を対象として構造化インタビューを実施した。得られたデータに関するフレームワーク分析から、ヴィーガニズムをめぐって「欠乏」・「自然さ」・「脅威」という3つの包括的テーマが特定された。分析からは、ヴィーガン食に関しては「欠乏」や「文化的アイデンティティに対する脅威」という否定的な認識が広く浸透しており、同時にヴィーガン食を実践する人をスティグマ化する態度も明らかになった。

このスティグマ化の根底にあるのは、カーニズム(肉食主義)に基づく規範的意識であり、これはイタリアのように肉が食文化の中心になっていない国においても見られた。こうした否定的な認識が主流であるにもかかわらず、ヴィーガニズムに対する肯定的な評価として見られたのは、ヴィーガン食が「自然」であるということであった。本研究の分析は、様々な要因に伴って社会的変化が進む状況ではヴィーガニズムに対する社会的認識が多面的でやや矛盾したものとなっていることを示している。

 

原文タイトル:"A football team with no midfield": A qualitative analysis of anti-vegan stigma in Italy

論文著者:Chiara Amicabile, Lorenzo Montali

公開日: 2025/12/05 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2025.108411

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