バターと植物油の摂取量 死亡率との関連を比較する

論文概要

 

重要性: バターと植物油を使うことが死亡率とどう関わっているかは不明である。従来の研究では一貫した結果が得られておらず、食生活を長期的に検証する必要がある。

目的: バターおよび植物油の摂取量が全死因死亡率や死因別死亡率とどのように関連しているか、米国の成人を対象として検証した。

デザイン・設定・参加者: 米国における3つの大規模コホート調査である看護師健康調査(1990-2023年)・看護師健康調査II(1991-2023年)・医療従事者追跡調査(1990-2023年)のデータを用いて前向きコホート研究を実施した。調査開始の時点で参加者の女性・男性は、がん・心血管疾患・糖尿病・神経変性疾患に罹患していなかった。

曝露: バター(食卓用・調理用)および植物油(ベニバナ油・大豆油・コーン油・キャノーラ油・オリーブ油)の摂取量を主な曝露因子とした。確立された半定量的調査手法である食物摂取頻度質問票を用いて4年ごとに参加者の食事内容を評価した。

主なアウトカムと指標: 全死亡率を一次アウトカムとし、がん・心血管疾患による死亡率を二次アウトカムとした。死亡の確認には全国死亡者データベース National Death Indexなどからの情報を使用した。死因の分類は死亡診断書および診療記録に基づき、医師1名が担当した。

結果: 追跡期間は最長33年間で合計221,054人の成人が参加し、調査開始時の平均年齢[標準偏差]は、 看護師健康調査で56.1 [7.1] 歳、看護師健康調査II で36.1 [4.7] 歳、医療従事者追跡調査で 56.3 [9.3] 歳)であった。死亡が確認されたのは50,932例で、がんによる死亡は12,241例、心血管疾患による死亡は11,240例であった。

バターと植物性油脂の摂取量に基づいて参加者を四分位のグループに分類した。潜在的な交絡因子を調整すると、摂取量が最も多いグループでは最も少ないグループに比べて全死亡率は15%高かった(ハザード比[HR]1.15;95%信頼区間[CI]1.08-1.22;傾向のp値<0.001)。

逆に、植物油を最も多く摂取するグループでは、最も少ないグループと比較して、総死亡率が16%低下していた(HR 0.84;95%CI 0.79-0.90; p <0.001)。キャノーラ油・大豆油・オリーブ油の摂取量が増えると、総死亡率は統計的に有意に低下し、1日あたり5 g 増えるごととのハザード比はそれぞれで0.85(95% CI、0.78-0.92)、 0.94(95% CI, 0.91-0.96)、0.92(95% CI, 0.91-0.94)となっていた(いずれもp < 0.001)。

植物油の摂取量が1日あたり10 g増えるごとに、がんによる死亡率は11%低下し、心血管疾患による死亡率は6%低下していた。一方、バターの摂取量が増加すると、がんによる死亡率は12%増加していた(HR 1.12;95% 信頼区間 1.04-1.20;傾向の p 値 < 0.001)。1日あたり10gのバターを同量の植物性油で代替した場合、全死亡率は推定で17%低下し(HR 0.83;95%CI 0.79-0.86; P < 0.001)、がんによる死亡率は17%減少した(HR, 0.83; 95% CI, 0.76-0.90; P < 0.001)。

結論と意義: コホート研究の結果から、バターの摂取量が増えるとともに死亡率が増加するのに対し、植物油の摂取量が増えた場合には低下することがわかった。バターの代わりに植物油を使うことにより、早期死亡の予防において大きな効果が得られる可能性がある。

 

原文タイトル:Butter and Plant-Based Oils Intake and Mortality

論文著者:Yu Zhang, Katia S Chadaideh, Yanping Li, Yuhan Li , Xiao Gu, Yuxi Liu, Marta Guasch-Ferré, Eric B Rimm, Frank B Hu, Walter C Willett, Meir J Stampfer, Dong D Wang

公開日: 2025/05/01 

論文URL:https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2025.0205

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