プラネタリーヘルス食と2型糖尿病の発症リスクの関連 英国バイオバンクによる前向き研究

論文概要

 

背景: 2型糖尿病は世界の主要な疾病の一つであり、プラントベースの食事パターンはこれを予防する上で大きな効果があるとされている。特にプラネタリーヘルス食*1は環境面の持続可能性が高いだけでなく、代謝の面でも効果があるが、この食事パターンをどの程度遵守しているかを測る指標として使われているのがプラネタリーヘルス食指数(PHDI)である。しかし、2型糖尿病を発症するリスクとプラネタリーヘルス食の関連についての研究は未だ限られており、プラントベースの他の食事パターンと比較した研究は特に乏しい。本研究では、英国の成人を対象とした大規模コホートにおいてPHDIによる遵守度と2型糖尿病を発症するリスクの関連を検証し、良く知られている他のプラントベースの食事パターンと比較した。

方法: 英国バイオバンクに登録された40-69歳の参加者112,032名を対象としてデータ分析を行った。ベースラインは2009年から2012年までの期間とし、この時点では2型糖尿病および心血管疾患に罹患している参加者はいなかった。各参加者についてそれ以降の経過を2021年まで追跡した。食事の摂取量は24時間思い出し法*2を用いて2回以上にわたって評価し、PHDIスコア(0点から130点)は推奨されている14種類の食品が摂取されているどうかによって算出した。プラントベースの他の食事パターン(代替地中海食 aMED・健康的なプラントベース食 hPBD・高血圧予防食DASH・代替健康食AHEI-2010)に関する指標は、一般に用いられている方法によって推定した。追跡期間中に発症した2型糖尿病は、診療記録と入院歴のほか、自己申告に基づいて確認した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定し、主な交絡因子を調整した。

結果: 追跡期間は9.4年(中央値)で、この間に2型糖尿病を発症したのは2666名であった。プラネタリーヘルス食の遵守度が最も高い四分位のグループを最も低い四分位のグループに比較した場合、2型糖尿病の調整ハザード比(95%信頼区間)は0.57(0.50, 0.64)であった。これはaMEDおよびhPDIにおけるハザード比(0.70(0.62, 0.78)および0.64(0.57, 0.72))に比べて強い効果であり、DASHおよびAHEI-2010と同程度であった(0.58(0.51, 0.65)および0.59(0.53, 0.67))。BMI値でさらに調整した場合、この関連性は13%から19%弱まった。野菜と魚の摂取量が多い場合や、赤肉・加工肉および添加糖の摂取量が少ない場合、2型糖尿病を発症するリスクは低下していた。

結論: 英国の成人を対象とした大規模コホート調査において、プラネタリーヘルス食を遵守することで2型糖尿病を発症するリスクは大幅に減少し、その効果は他の一般的なプラントベースの食事パターンと同等ないしそれを上回っていた。以上の結果から、プラネタリーヘルス食やその他のプラントベース食は環境的に持続可能な食生活の選択肢であり、これを推進することによって2型糖尿病のリスクを低減できる可能性がある。

*1 EAT-Lancet 食とも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。スコアでは、14項目の食品成分について摂取レベルの基準に食事内容が準拠しているかを測定する。*2 構造化されたインタビューで、前日に摂取したすべての食品と飲料に関する詳細な情報を把握する調査方法

 

原文タイトル:Planetary health diet, other plant-based diets and risk of type 2 diabetes: a prospective study from the UK Biobank

論文著者:María Del Carmen Aznar de la Riera, Rosario Ortolá, Stefanos N Kales, Esther García-Esquinas, Fernando Rodríguez-Artalejo , Mercedes Sotos-Prieto

公開日: 2025/09/30 

論文URL:https://doi.org/10.1186/s12933-025-02909-z

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