プラントベース食と認知機能アウトカム システマティックレビューとメタアナリシス

論文概要

 

植物性食品を豊富に含む食事パターンには地中海食やMIND食(神経変性遅延に対する地中海-DASH介入食)があり、認知機能を保つうえで効果があるとされてきた。しかし、こうした関連にプラントベースの食習慣がどのように影響しているのかについては十分に検証されていない。本稿のシステマティックレビューでは、プラントベース食と認知機能に関するアウトカムの関連について検証した。

関連文献の検索には Medline・Embase のデータベースを使用し、検索のキーワードにはプラントベース食に関連する単語(「ベジタリアン食」など)や認知機能に関連する単語(「認知症」など)を用いた。全ての研究デザインをレビューの対象とした。研究内容のスクリーニングおよびデータの抽出は複数の研究者が独立して実施し、ニューキャッスル・オタワ・スケール Newcastle-Ottawa Scale を用いて研究の質を評価した。

メタアナリシスでは、プラントベース食と認知機能を検証した前向き研究を対象とし、データの分析には固定効果回帰モデルを用いた。22件の研究が対象となったが、その方法論とアウトカムには大きな違いが見られた。プラントベース食の定義には、ベジタリアンと非ベジタリアンの比較のようにカテゴリーに基づくものや、健康なプラントベース食指数 hPDI のように食事パターンへの遵守度に基づくものがあり、後者の場合では高いスコアが遵守度の高さを表していた。質の高い前向きコホート研究2件を抽出して個別にメタアナリシスを実施し、プラントベース食指数と認知機能アウトカムの関連を検証した。

認知機能障害について最も高い四分位と最も低い四分位を比較した場合、2つのコホート研究を合わせた全体的なオッズ比(95%信頼区間)は、プラントベース食総合指数 PDI では 0.61(0.55, 0.68; I² = 97.1%)、健康的なプラントベース食指数 hPDI では 0.68(0.62, 0.75; I² = 84.3%)であった。認知症に関する全体的なハザード比は、PDI で 1.03(0.91~1.17;I² = 0%)、hPDI で 0.85(0.75~0.97;I² = 0%)、不健康なプラントベース食指数で 1.17(1.03~1.33; I2 = 60.3%)となっていた。

これらの結果から、健康的なプラントベース食品を中心とし、不健康なプラントベース食品や動物性食品を制限した食事パターンでは認知機能障害や認知症に罹患するリスクが低下すると考えられる。しかし、別の研究を比べた場合の結果には一貫性が見られないことから、質の高い研究によってさらに検証する必要がある。このレビューはPROSPEROデータベースに登録されている(CRD42022380055)。

 

原文タイトル:Plant-Based Diets and Cognitive Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis

論文著者:Catherine Bigras, Riccardo Mazzoli, Danielle Laurin, Marcella Malavolti, Giulia Barbolini, Marco Vinceti, Jean-Philippe Drouin-Chartier, Tommaso Filippini

公開日: 2025/10/16 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.advnut.2025.100537

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