ベジタリアンとペスカタリアンが抱える認知的不協和を理解する

論文概要

 

ベジタリアンやペスカタリアンが自分たちの食事に使われている動物により少ない心的能力を帰属するのだろうか?

ほとんどの人は、人間以外の動物の福祉を気にかける。 しかし、その同じ人々が日常的に動物性食品を食べている。 動物福祉に配慮することと、動物性食品を食べ続けることの間にある緊張は、「認知的不協和」と呼ばれる心理的な居心地の悪さを作り出す。 研究によれば、肉食者は、動物を食べることで引き起こされる納まりの悪さを軽減するための戦略を用いている。 例えば、認知的不協和を軽減する方法として、食用にされる動物に、低いレベルの有感性や知能を帰属する。


これまでの研究では、食用にされない動物と、畜産動物それぞれに対する雑食者(omnivore)の態度に焦点が当てられてきた。この論文では、ベジタリアンやペスカタリアンが、肉食者が他の動物性食品の消費を正当化するために用いるのと同じ戦略をとるかどうかを調査することで、この主題をさらに発展させることを目的とする。


福祉への懸念から肉を食べないベジタリアンやペスカタリアンは、搾取的な慣行によって得られた他の種類の動物性食品(乳製品、魚、卵)を依然として食べている。 したがって、彼らもまた、自分たちの食の選択によって、異なる動物種には、異なる道徳的価値を帰属し、それらの動物種に向ける関心も異なるように思われる。 これは、認知的不協和を軽減し、卵、魚、乳製品など他の動物性食品を食べ続けながら、食肉のために使われる動物への配慮を表明することに居心地の良さを覚える手立てなのかもしれない。


こうした傾向の背後にある心理的メカニズムを理解することは、プラントベースの食生活を採用する際の障壁を特定するのに役立つ。 これは、動物由来の食がもつ倫理的、気候的影響がますます憂慮されていることを考えると、特に重要である。

この研究では、558人のボランティアが自らの食習慣を報告するオンライン・アンケートに回答した。 回答者は、ビーガン、ベジタリアン、ペスカタリアン、フレキシタリアン、雑食者の5つのカテゴリーに分けられた。 研究者たちは、種差別的信念、心的帰属(知能や感情といった動物の心的的能力についての見方)、そして水生動物と陸生畜産動物に対する道徳的関心を測定した。


これまでの研究に基づき、著者らは種差別の点数が最も高く、食用動物に対する道徳的関心と心的能力の帰属を示す点数が最も低いと予想した。 ヴィーガンは、それとちょうど正反対の傾向を示すと予想された。 ベジタリアンとペスカタリアンはより変則的な傾向を示すと予想された:

  • 仮説1:ペスカタリアンは陸生畜産動物に比べて水生種に対する道徳的関心が低い。
  • 仮説2:ペスカタリアンは、陸生畜産動物に比べて、水生動物に対して知能や有感性を認める程度が低い。
  • 仮説3:ベジタリアンやペスカタリアンは、乳製品や卵の生産に使われる動物(「乳牛」や採卵鶏)よりも、食肉を生産するために使われる動物(「肉牛」や「ブロイラー鶏」)により高い関心を示す。

研究の結果、ペスカタリアンとベジタリアンは、自分たちの食習慣に合わせて道徳的関心や動物の心に対する見方を調整する傾向があることがわかった。 これは、同じ動物種が異なる種類の食品生産に使われる場合にも起こる(例えば、乳用牛と牛肉、ブロイラー鶏と採卵鶏など)。


このような傾向から、人々は人間以外の動物の「役割」とみなしたもの(例えば、「食用動物」と「非食用動物」)に基づいて、人間以外の動物にさまざまな価値や能力を帰属していることを示している。 したがって、ペスカタリアンとベジタリアンも、認知的不協和を軽減するために、肉食者が用いるのと同じ戦略を用いている。

この研究から得られた他の洞察によれば、雑食主義者、フレキシタリアン、ペスカタリアンの食事の選択において、反種差別的な信念は、重要な役割を果たしていない可能性がある。 しかし、ビーガンやベジタリアンではその逆である。

著者らが指摘するように、この研究にはいくつかの限界がある。 例えば、この研究の参加者は自分の食生活を自分で分類しているため、各食集団への分類は完全には正確ではないかもしれない。 さらに、この研究はすでに動物福祉に関心のある参加者を集めた可能性があるため、標本集団は現実社会を反映していないかもしれない。 さらに、水生動物に対する人々の見方については、より多くの研究が必要である。これまでの研究では、消費行動は心の帰属と道徳的関心の予測因子として考えられてきた。 しかし、本研究は、動物の心に関する知識の増加、道徳的関心度、心の帰属が消費行動を予測できることを示唆している。 このため、本研究の著者らは、動物の心についての理解を深める戦略と、すべての畜産動物に対する道徳的関心を高めることを目的としたアドボカシー活動を組み合わせることで、動物由来食品の削減に貢献する可能性があることを示唆している

※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。

 

原文タイトル:Minding some animals but not others: Strategic attributions of mental capacities and moral worth to animals used for food in pescatarians, vegetarians, and omnivores

論文著者:Ioannidou, M., Francis, K.B., Stewart-Knox, B., Lesk, V.

公開日: 2024/01/01 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2024.107559

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