ミツバチの有感性 科学研究がEUの動物福祉政策に与える意義

Honeybee Sentience: Scientific Evidence and Implications for EU Animal Welfare Policy

Roberto Bava, Giovanni Formato, Giovanna Liguori, Fabio Castagna

2025/07/12

https://doi.org/10.3390/vetsci12070661

論文概要

 

動物の有感性に関する認識の高まりは、欧州連合(EU)の動物福祉法において顕著な進展をもたらした。しかしこれには重大な不整合が残っている。哺乳類や鳥類、(イカ・タコなど)頭足類が感覚意識を持つ存在として法的に保護されているが、その一方で、ミツバチ Apis mellifera には複雑な認知や感情、感覚があることを示す確固たる科学的知見があるにもかかわらず、こうした保護の対象から除外されている。

本稿では学際的視点から、無脊椎動物の有感性に関する新たな知見と、EUにおける現行の法的枠組みとの間にある乖離を検証する。比較のための事例としてミツバチと頭足類を取り上げ、有感性の法的認知に関する基準に見られる不一致について検討する。

科学研究によれば、ミツバチには高度な認知機能や感情、行動の柔軟性があり、これは法的保護の対象となっている脊椎動物に劣らないものであることを確証する知見はさらに増えつつある。福祉関連の法制からミツバチが除外されていることには科学的根拠がなく、特に受粉と生態系の安定のためにミツバチが中心的な役割を担っていることを考慮すると、倫理および生態学の観点から懸念される問題である。

本稿では、原則としてEUにおける動物福祉政策にミツバチを包含することを提唱するものである。しかし、その導入に対しては批判的見解もあることから、これについては特に項目を設けて検討する。このためには、恒常的な監視機関による指導のもとでエビデンスに基づく漸進的なアプローチを進めることが必要であり、これによって科学的知見の進展と並行して法制度を進化させ、ワンヘルスの枠組みの中で倫理面での一貫性、持続可能な農業、健康を一体的に推進することが可能となる。

消費者は動物福祉と環境への配慮を飼養において不可欠の原則と捉え、福祉に配慮した飼育システムで生産された動物性食品を慎重に選択している。このアプローチは、消費者からのこうした懸念に応えるものであり、同時に養蜂家にとって経済的な意味で明らかなメリットをもたらすものでもある。

 

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