世界規模での畜産業の急速フェーズアウトで、温室効果ガスレベルを30年間安定させ、今世紀のCO2排出量の68%を相殺できる

Rapid global phaseout of animal agriculture has the potential to stabilize greenhouse gas levels for 30 years and offset 68 percent of CO2 emissions

Michael B. Eisen, Patrick O. Brown

2022/02/01

https://doi.org/10.1371/journal.pclm.0000010

論文概要

 

畜産業は、強力な温室効果ガスであるメタンと亜酸化窒素を持続的に排出し、動物を飼養する土地のバイオマス*1に含まれる炭素量を減少させることで、地球温暖化の大きな原因となっている。しかし、畜産を廃止した場合の効果の大きさに関する従来の推定は、単一の要因にのみ焦点を当てていることが多く、より根本的な変化によって得られる潜在的な利益の全体像については未だ適切に評価されていない。

ここでは、畜産のフェーズアウト(段階的廃止)によってもたらされる、排出削減とバイオマス回収における複合的かつ長期的な効果をモデル化し、現代の世界全体の畜産にかかる「気候機会コスト」の全容を定量化する。

他の排出削減が全くない場合であっても、畜産業のフェーズアウトによって大気中のメタンと亜酸化窒素のレベルが持続的に低下し、二酸化炭素の蓄積は緩やかになる。この変化は、地球温暖化係数*2として見た場合、今世紀末までに人為に起因する二酸化炭素の排出量を年間25ギガトン削減するのと同じ累積効果をもたらし、気温の上昇を2度に抑えるために必要とされる排出削減量の半分を達成できる。

潜在的な効果はこのように大きく速効性があることを考慮すれば、気候変動による破滅的な影響を回避する戦略において、畜産業の縮小または廃止をその最前線へと位置づける必要がある。

*1 動植物に由来する再利用可能な有機性の資源で、化石燃料を除いたものの総称 *2 二酸化炭素を基準にして、メタンや亜酸化窒素など、ほかの温室効果ガスの影響の大きさを示す指標

 

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