中国におけるアニマルウェルフェア科学の発展 探索的分析

論文概要

 

本稿では中国におけるアニマルウェルフェア科学の発展を詳しく理解するため、アニマルウェルフェアに関して1996年から2019年に中国学術情報データベース China National Knowledge Infrastructure (CNKI) に登録された研究プロジェクトを検索・分析した。

論文のタイトル・抄録に基づいてデータベースを検索した結果、260件以上の論文が抽出された。これらはアニマルウェルフェアに関する内容を含む200件の研究プロジェクトと関連しており、これを以下の観点から分析した:(a) どのような学問分野が関わっているか、(b) どのような動物種が対象とされているか、(c) どのように動物が利用されているか、(d)アニマルウェルフェアの概念はどのように捉えられているか、(e) アニマルウェルフェアの倫理的側面はどのように取り上げられているか。

分析の結果、アニマルウェルフェア科学への関心は高まっており、特に畜産動物と実験動物が焦点が当てられていることがわかった。研究プロジェクトは増加しており、研究対象となる動物種の数も増加していた。研究プロジェクトの大半は、フレイザー David Fraser が示した「生物学的機能」に近いアニマルウェルフェアの枠組みに基づくか、あるいはそうした観点を含むものであった。

結論として、アニマルウェルフェアに対する科学的関心の高まりは、近年の中国における様々な発展を反映したものであり、これには動物の利用に対する市民の関心の高まりや、アニマルウェルフェアの重要性に関する学術的議論の発展が含まれる。また、動物に関わる政治・経済を発展させることが、科学と食糧生産において世界的なプレーヤーになるという国家目標に結びついているということもある。

中国のアニマルウェルフェア科学をさらに発展させるためには、安定した資金と学際的な共同研究が必要であり、アニマルウェルフェアの基礎的側面、実用には直結しない問題、アニマルウェルフェアの倫理的側面について検証し成果を挙げる必要がある。

 

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