中国農業の構造改革で、食事消費による炭素排出を削減する

Agricultural restructuring for reducing carbon emissions from residents' dietary consumption in China

Ziyue Yu, Sijian Jiang, Ali Cheshmehzangi, Yu Liu, Xiangzheng Deng

2023/01/05

https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2023.135948

論文概要

 

気候変動の緩和に貢献することを目指して、中国は2030年までに炭素のピークを達成し、2060年までにカーボンニュートラル*1を達成することを公約した。しかし、この目標を達成するには、炭素排出量を大幅に削減する必要がある。人類は生存に必要な食料を消費しなければならず、そうした社会の食料需要は、農業構造の発展レベルに対応している。農業構造の再構築によって食料関連の環境負荷を削減することに関して、今日まで科学的関心が集まっていなかった。

このため本研究では、食料消費・気候変動・農業構造を組み合わせ、汎用されている共通社会経済経路(SSP)*2に基づいて将来シナリオを設計する。さらに、中国が2030年に炭素ピークに到達するために、本研究ではライフサイクル・アセスメント*3を適用し、さまざまな食事構造における中国住民の炭素削減の可能性を明らかにする。需要の観点からは、食生活を再構築するための提言を示し、将来の中国における農業の再構築で目指すべき方向性を導き出す。また、赤身肉を野菜や果物などの植物性食品に置き換えた食事構造が、より大きな炭素削減の可能性を持つことも明らかにする。

伝統的な農業構造は大量の食料を消費し、大量の温室効果ガスを発生させている。肉や高脂肪食品の消費を減らすことによって、食料消費で排出される温室効果ガスを削減できる可能性がある。さらに、農業構造における飼料用食品の割合を削減することも炭素ピークの目標を達成するうえで有益となる。食事構造の転換は、中国の農業構造を前進させるとともに、グリーンで持続可能な農業の発展を促進するであろう。

*1 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすること *2 Shared Socio-economic Pathwaysの略。2100年までの世界の社会経済における変化を仮定した気候変動シナリオで、異なる気候政策のもとでの温室効果ガス排出量を推定する *3 製品・サービスの製造・生産から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを細分化し、環境負荷を定量的に評価する手法

 

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