乳製品、卵、魚の消費者における認知的不協和

論文概要

 

本研究では、魚、乳製品、卵の消費者が、これらの製品の消費に伴う道徳的葛藤を軽減するために用いる心理的戦略を評価する。

動物製品を消費することは、その生産と消費から生じるかもしれない深刻な環境問題や健康問題はもちろんのこと、これらの製品を得るために有感性をもつ動物に与えられる苦しみや死のために、重要な倫理的問題を提起する。 動物を気にかけ、不必要に苦しんだり殺されたりすることを望まない人々にとって、この消費は道徳的な葛藤を生む可能性がある。

この葛藤──文献では認知的不協和の状態と呼ばれている──を感じているごく一部の人々は、単に動物性食品を食べるのをやめ、ヴィーガンになる。それにより動物を気にかけることと、動物を食べることの間にある道徳的葛藤はすぐに解消される。 しかし、かなりの割合の人々は行動を変えず、代わりにこの状況から感じる道徳的不快感を軽減するために他の戦略を用いる。

認知的不協和に対処するための心理的戦略を調べた研究もあるが、肉に焦点を当てたものが多く、大抵は乳製品、卵、魚の摂取については考慮されていない。 この研究では、肉だけでなく乳製品、卵、魚も考慮に入れながら、雑食者、フレキシタリアン、ペスカタリアン、ベジタリアン、ビーガンという異なるカテゴリーの人々が、道徳的葛藤を回避するためにどのような戦略を用いているのかについて詳しく調べた。

著者らはアンケートを作成し、ソーシャルメディアを通じて配布した。 アンケートでは、道徳的葛藤を減らすための戦略について尋ねるとともに、一定の人口統計学的特徴を収集した。 720人の成人が回答し、上記の5つの食生活集団に分けられた。 フレキシタリアンは63人と最も少なく、ビーガンは203人と最も多かった。

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5つの戦略が検討され、測定された:

  1. 否認(Denying):動物に重要な心的能力があること、動物が痛みや感情を感じ、搾取により苦しむことを否認する
  2. 正当化(Justifyinig):肉は健康のために必要である、食べるのは自然である、あるいは私たちは常にそうしてきたのだからこれからもそうするのが普通である、といった信念をもって動物性食品の消費を正当化する
  3. 切り離し(Dissociating):動物の死体ではなくステーキを見るなど、動物性食品を動物から切り離す
  4. 回避(Avoiding):搾取される動物の有感性に関する科学や、農場で動物が耐えている苦しみに関する調査など、道徳的葛藤を増大させる可能性のある情報を回避する
  5. 二分化(Dichotomizing):動物を可食なものとそうでないものに二分し、前者が後者よりも重要でないと考える。 こうすることで、人々は特定の動物を愛し、その福利を守る一方で、他の動物の運命には目をつぶることができる。

これら5つの戦略について、肉食については、ヴィーガンを除くすべての集団が否認を用いる傾向があり、雑食主義者は他のすべてのグループよりも正当化をはるかに多く用いることが示された。 興味深いことに、すべてのグループが回避を比較的同じ割合で使用し、ヴィーガン以外のすべてのグループが二分化をより高い割合で使用した。

卵と乳製品の摂取については、卵と乳製品を食べるすべてのグループが否定と正当化を用いた。 この場合、ペスカタリアンとベジタリアンも切り離しをヴィーガンよりも多く用いた。 一方、ヴィーガン、ベジタリアン、ペスカタリアンは回避を用いた。

最後に、魚の消費については、雑食者は否認を用い、雑食者とペスカタリアンは正当化を用いて自分の食生活を理解していることがわかった。

全体として、これらの結果は──おそらく予想通りであろうが──幅広い種類の動物性食品を摂取している人は、そうでない人に比べて、関連する道徳的葛藤を軽減するための戦略をより多く用いていることを示している。 しかし、あるひとつの戦略については、様々な条件下で雑食者はあまり使わなかった。 著者らは、食事を通じて責任を共有しているかどうかにかかわらず、ほとんどの人は動物が虐待され殺されていることを思い出させるような情報に触れることを好まないという仮説を立てている。 肉を食べる人にとって、それは道徳的葛藤を増大させるかもしれない。 また、単に悲しさや怒りを感じる人もいるだろう。

こうした心理的戦略の多くが、最新の科学的証拠と矛盾する根拠のない信念に基づいていることは注目に値する。 例えば、人間が健康であるためには動物性食品を食べる必要があるという正当化や、畜産動物の認知能力の否定がそうである。 また、ステーキと動物の死体を切り離したり、特定の動物を食用とし、それ以外を食用でないと恣意的に分類したりする場合のように、現実と矛盾する認知バイアスに基づくものもある。 回避を除くこれらの戦略はすべて、教育、定期的な証拠の供給、論理的な推論によって対抗することができる。 多くの動物擁護者たちがすでに実践しているように、そうし続けることで、動物性食品の消費者はこれらの戦略に頼ることがますます難しくなり、食生活の傾向がさらに変化していくかもしれない。

※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。

 

原文タイトル:Feeling morally troubled about meat, dairy, egg, and fish consumption: Dissonance reduction strategies among different dietary groups

論文著者:Ioannidou, M., Lesk, V., Stewart-Knox, B., & Francis, K. B.

公開日: 2023/01/01 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2023.107024

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