論文概要
背景: 現代の食習慣は肥満や非感染性疾患の増加の原因となり、環境破壊をさらに悪化させている。より健康的で持続可能な食習慣を推進する手段としてデジタルメディアは有望であるが、有効性に関するエビデンスは確立されていない。
目的: 本稿のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、(1)食習慣を健康的で持続可能に改善するうえでデジタルメディアを用いた介入策が有効であるか、(2)どのような参加者や介入法であればより大きな効果が得られるか、の2点について検証した。
方法: 関連文献の検索は2024年1月にWeb of Science・Embase・Scopusを用いて系統的に実施した。同様の検索は2025年9月にも実施し、2回の検索結果を相互に参照して補完した。疾患や障害を持たない集団における準実験的または縦断的デザインによる調査研究であること、プラントベース食品の摂取量を増やす、または動物性食品の摂取量を減らすうえでデジタル介入法の有効性を検証した研究であること、適格性の条件とした。研究結果にバイアスが存在する可能性を検証するため、Cochrane バイアスリスク評価ツールを用いた。行動変容テクニックの分類法(バージョン1)に基づいて、対象となった介入研究を行動変容の手法ごとに分類してコード化した。ロバスト分散推定によるランダム効果メタアナリシスを実施し、参加者および介入手法の特徴に関する調整分析を行った。
結果: スクリーニングの結果、対象となったのは2004年から2025年に発表された52件の論文で、参加者の総数は24,652名であった。メタアナリシスでは、デジタルメディアを利用した介入法が食品摂取量に及ぼす効果は小さいものの、統計的に有意な正の効果であることが明らかになった(d=0.33、95%信頼区間 0.25-0.42;P<.001)。しかし、異質性が大きいことから(I²=86%、95%予測区間 -0.21~0.87)、介入法の性質によって効果には大きなばらつきがあると考えられる。調整分析では、肉類の摂取量の削減を目的とした介入法、プラントベース食を促す介入法はいずれも有効であり(d=0.38、95% CI 0.20-0.57; P<.001; d=0.33、95% CI 0.23-0.42; P<.001)、両者の間に有意差は認められなかった(P=.53)。
デジタル介入の効果は若年成人において最も強かったが(d=0.46, 95% CI 0.30-0.61; P<.001)、年齢による違いは統計的に有意ではなかった。介入の効果はプラットフォーム間で有意に異なり(P=.03)、ソーシャルメディアを用いた介入では他の手法に比べて強い効果が見られた(d=0.65, 95% CI 0.41-0.90; P<.001)。画面上にプロンプトやキューを採り入れることで効果は有意に強まった(d=0.58 vs d=0.30; P=.04)。社会的サポートや行動の比較* を採り入れた介入では、統計的な有意差にはならなかったものの、より大きな効果が得られた(いずれもd=0.39; P<.001)。青年期の人や社会経済的に低い状況にある人を対象とした研究は極めて乏しかった。
結論: 本稿のレビューでは、デジタルメディアは食行動を改めるための介入において革新的な手段となること、また介入のデザインによってその有効性は異なることを明らかにした。なかでもソーシャルメディアは社会的で双方向のコミュニケーションを可能にすることから、これまでにない有望な手段となっている。食環境のデジタル化は進みつつあることから、本研究で得られた知見はプラントベース食を推進する上で最も有効なデジタル介入法を明確に示し、研究者や実務家にとってタイムリーな指針となる。しかし、より質の高い研究によってこれらの知見をさらに確証する必要があり、青少年や低所得層に見られる大きな格差に対応することが求められる。
* 行動変容テクニックにおいて、「社会的サポート」は専門家や家族の支援、「行動の比較」は自己の行動と他者や目標との比較を意味する
原文タイトル:Digital Interventions Targeting Healthy and Sustainable Eating Behavior: Systematic Review and Meta-Analysis
論文著者:Käbi Vanwinkelen, Bram Spruyt, Tim Smits
公開日: 2026/01/08

