動物の感覚意識・福祉・幸福 馬と関わった経験のある人々の態度

論文概要

 

感覚意識*1のある動物をビジネスモデルの中心に据える組織は、動物の福祉や幸福を保護している姿勢を示す必要がある。そのためには望ましい環境を動物に提供する必要があり、これは事業が社会的に認容されるうえで不可欠である。本研究では、馬について豊富な経験を持つ参加者*2を対象とした横断調査を実施し、馬の感覚意識、福祉と幸福に関する態度を調べた。

回答者677名のほぼ全員が、馬には感覚意識があることを信じていた(676名、99.9%)。自由形式の回答を分析した結果、(1)感覚意識を認識することが馬の精神状態や福祉・幸福を理解することにつながる、(2)人間には動物の感覚意識に配慮する道徳的義務がある、という2つのテーマが特定された。馬が外的刺激に反応し、周囲の環境に応じて振舞う様子を回答者は観察して知っており、これが馬に感覚意識があるという信念の根拠となっていた。

第1のテーマは、感覚意識というものを回答者がどのように理解しているか、また馬の行動を解釈し、精神状態を推測する上でそれがどのように役立ったかというものであった。一方、人間は馬の生活環境を管理し、環境が馬に及ぼす影響を考慮する立場にあるため、馬に対する道徳的義務があると考えられる。第2のテーマは、こうした意味での道徳的義務に関するものであった。この道徳的義務は、馬の感覚意識に配慮する責任として理解されており、こうした配慮は活動の場における馬の福祉・幸福を検討する場合や、馬との交流や調教・競技に際して必要となる。

以上の結果は、豊富な経験を持つ参加者には感覚意識について高度な理解があることを示唆しており、馬に感覚意識があること、それに配慮する必要があることが認識されていると考えられる。組織の方針をアップデートする際には、こうした人々が持つ知識を活用することで、動物福祉の「5つの領域モデル」の導入を推進できると思われる。

*1 感覚意識 sentience に関しては井上太一氏の訳語を参照した https://vegan-translator.themedia.jp/posts/53922064/  *2 オーストラリアまたは英国の成人で、馬・ロバ・ラバの福祉に関心があり、競馬・乗馬・スポーツ・観光を通じて馬に関わった経験が3年以上あること、個人またはチーム・委員会のメンバーとして馬の福祉に関わっている、という基準を満たす者が対象となっている 

 

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