動物は人間が過去に示した表情を記憶している

論文概要

 

ヒトにとって表情は重要な社会的シグナルであり、他者に対する我々の認識は過去に相手が示した微妙な感情によって影響されている可能性がある。多くの動物種もまた、表情を通じて他者の感情を識別できることが知られている。ある個体に関して体験した感情を覚えていることには明らかな利点があり、その個体に再び遭遇した際に社会的な絆を形成したり、攻撃を回避したりすることができる。

動物が自分に直接危害を加えた個体を記憶していることを示した研究は存在するが、表情に現れた微妙な感情を観察するだけで動物が特定の個体について安定した記憶を形成できるかは不明である。本研究では条件を厳密に統制した実験を実施し、怒りの表情または喜びの表情を示した人物の写真を飼い馬に提示した。続いて数時間後にその表情を示した人物を中立的な条件で馬と対面させた。

こうした表情を短時間見ただけであっても、同じ人物に対して後に馬が示す反応には明確な違いが生じた。一方、写真と一致しない別の人物に対してはこうした反応の違いは見られなかった。これは、過去に見た怒りの表情が否定的に、喜びの表情が肯定的に知覚されたことを示唆している。実験に参加した2人の人間は、馬が事前に見た写真に関して何も知らされていなかった。

以上の結果は、動物がその時々に示される人間の感情の手がかりを正確に読み取ることができること、さらにその記憶を利用して特定の個体との将来の関係を築いていることを明確に示している。

 

原文タイトル:Animals Remember Previous Facial Expressions that Specific Humans Have Exhibited

論文著者:Leanne Proops, Kate Grounds, Amy Victoria Smith, Karen McComb

公開日: 2018/05/07 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.03.035

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