動物園の動物福祉における人工知能の可能性

論文概要

 

動物園や水族館では、動物福祉の状況を詳細かつ客観的・定期的に評価することが極めて重要な課題となっている。しかし、これらの施設で飼育されている動物種や個体数は多数に及ぶため、従来の方法で動物福祉を評価することは困難である。人工知能(AI)を活用した自動化技術は、こうした課題に対して解決策を提供できる可能性がある。この文献レビューでは、この分野における最近の進展を概観し、特に動物園・水族館における動物福祉に関する研究を中心に取り上げる。

動物の行動や福祉のモニタリングを目的としたAIの活用は、近年では特に畜産動物に関してますます一般的なものとなっている。最近の研究では、鶏や豚、羊、牛の行動を識別し評価することがAIに可能かどうかについての検証が進められており、具体例としては牛の発情期の予測、動物の鳴き声の分類、動物福祉に関連する問題(牛や羊における跛行の初期症状など)を検出することなどが挙げられる。

コンパニオンアニマルにおけるAIは、顔の認識、鳴き声からの感情の認識、行動のモニタリングなどに利用されている。実験動物では、2000年以降はAIツールによる行動モニタリングが急速に進んでいる。AIの活用は動物園でも進みつつあり、個体の識別や飼育施設内での行動モニタリング、エンリッチメントが使われた時間の計測など、動物の行動を定量化するために利用されている。

動物福祉を目的としたAIの活用はこのように急速に進んでおり、これによって動物園・水族館におけるモニタリングや予測の精度が向上し効率化が進むとすれば、動物の管理と福祉にも向上が期待できる。

 

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