論文概要
シンガポールでは最近、培養肉製品が認可されたにもかかわらず、この新しい食品技術に対する一般市民の認識についての理解はいまだ限られている。本研究では、態度形成理論とメンタルモデル*の枠組みを用いて、培養肉のリスクとベネフィット(利益)の認識に関するメンタルモデルを一般市民と専門家とで比較した。
オンラインで参加者40名による4回のグループ・ディスカッションから、培養肉による個人レベル・社会レベルでのベネフィット(例:健康上の利益、食の安全保障)、個人レベルのリスク(例:潜在的な健康上の問題、価格の問題)に関しては、専門家と一般市民のメンタルモデルの認識は一致していることがわかった。
しかし、社会レベルのリスクに関する理解では、専門家と一般市民では違いが見られた。一般市民において懸念されていたのは、宗教や人種によって異なる食習慣に対して培養肉には課題があることであった。一方、専門家が問題としたのは、培養肉に対する消費者の態度が不明なために、投資における不確実性が増している可能性であった。理論的および実践的な意義に関して考察する。
*過去の経験や環境から無意識のうちに形成された価値観、思考の枠組み
Shirley S. Ho, Mengxue Ou, Zhing Ting Ong
2023/11/30
Exploring the general public’s and experts’ risk and benefit perceptions of cultured meat in Singapore: A mental models approach