屠殺場での就労が及ぼす心理的影響 システマティックレビュー

The Psychological Impact of Slaughterhouse Employment: A Systematic Literature Review

Jessica Slade, Emma Alleyne

2021/07/07

https://doi.org/10.1177/15248380211030243

論文概要

 

屠殺場労働者の仕事は、許可を得て動物の殺処分を行うことである。しかし、こうした行動が労働者の幸福に及ぼす影響はよくわかっていない。このシステマティックレビューでは、屠殺場での就労が及ぼす心理面の影響について、これまでに報告されている研究結果を総合して検証した。

事前に設定した組み入れ基準を満たした研究は14件であった。このレビューから得られた研究結果をその主題によって、1.精神疾患の有病率、2.労務に対応するための心理行動メカニズム、3.屠殺場での就労と犯罪加害の関連性、の3種類に分類した。

その結果、屠殺場労働者では、メンタルヘルスの問題、特にうつ病と不安症の有病率が高く、さらに暴力の行使を支持する傾向が強いことがわかった。これらの労働者はまた、職場環境やこれに関連するストレス要因に対処するため、家族やコミュニティ、宗教などからの支援に頼るか、うまく適応できない場合は(動物に対する)感情を切り離す、薬物・アルコールによる自己治療、あるいは暴力に訴えるなど、様々に異なる対応をとっていた。

最後に、屠殺場における労働が犯罪の増加と関連していることを示す研究結果も一部にある。ここで検証した研究からは、さまざまな反社会的行動、特に性犯罪との関連性が示されている。暴力犯罪との関連を示す結果は見られなかった。従来の研究結果をふまえ、今後の研究では方法論的により厳密な調査手法を採用することが求められる。レビューの結果から、実務家や政策立案者が注目すべき主要な知見を取り上げて議論する。

 

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