植物性脂肪の多い食生活は注意欠陥・多動性障害(ADHD)の予防に結びつく 世界150カ国以上を対象とした調査研究

論文概要

 

背景: 食生活と栄養素は神経疾患に関わる新たな主要因として注目されている。注意欠陥・多動性障害(ADHD)は世界的にも重要な神経発達障害の一つで小児期に問題となるが、成年期に認知・診断される例が増加している。正確な病因は不明であるが、ADHDには遺伝的要因と環境要因が複合的に関わっているとされ、特に食事内容や栄養素を含む食環境の影響が示唆されている。

しかし、これまでの研究では臨床的に診断が確定したADHDにおいて栄養素や食事パターンの影響を検討したものがほとんどであった。ADHD の有病率と発症率には食生活と栄養素の相互作用や、さらに社会経済的状況などの諸要因との複雑な相互作用が影響している可能性があるが、これまでは検証されてこなかった。栄養素の摂取量は食事内容と食環境を反映するが、本研究では社会経済的状況やADHDの有病率・発生率とどのように関連しているかについて、世界規模のデータを用いて体系的に検証した。

方法: 1990年から2018年までのADHDによる疾病負担のデータ(発生率・有病率)、主要栄養素の摂取量、国内総生産(GDP)を150カ国以上から収集し、栄養幾何学に関する一般化加法混合モデルを用いて分析した。

結果: モデリングの結果から、食環境と社会経済的状況の相互作用がADHDに影響することが示唆された。脂肪の摂取量、特に植物性脂肪の摂取量はADHDの有病率・発症率の低下と関連していた。この関連は性別や年齢に関わらず認められ、総エネルギー摂取量に影響されなかった。

結論: 食環境における脂肪、特に植物性脂肪の摂取量は、世界的に見てもADHD有病率・発症率の低下と相関しており、予防のための潜在的効果があることを示唆しており、これはケトン食によってADHDの改善が得られるとする先行研究にも一致している。その基盤にあるメカニズムに関しては、今後の詳しい研究で解明するする必要があり、これは将来的にADHDの予防に向けた食事介入のための基礎的知見となり得る。

 

原文タイトル:Food environment with high plant-based fat supply is associated with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) protection: a global study with more than 150 countries

論文著者:Duan Ni, Alistair Senior, David Raubenheimer, Stephen J Simpson, Ralph Nanan

公開日: 2025/11/11 

論文URL:https://doi.org/10.3389/fnut.2025.1658228

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