欧州において2型糖尿病の発症に関わる栄養学的要因 システマティックレビュー

論文概要

 

背景・目的: 欧州連合(EU)の公衆衛生において2型糖尿病による疾病負荷は増大しているが、これは食事パターンをはじめとする生活習慣によるところが大きく、適切な対策によって修正することが可能である。本稿のシステマティックレビューでは、EU域内において栄養学的要因と2型糖尿病の関連を調査した観察研究を統合し、地域ごとの違いとEUレベルでの栄養政策における意義を取り上げる。

方法: レビューはPRISMA 2020ガイドラインに準拠し、PROSPEROに事前登録された(CRD42020219994)。複数のデータベース(PubMed、Embase、Scopus、Web of Science)を用いて文献を検索した結果、23,437件の研究論文が特定され、このうち104件の観察研究を対象とした。これらの研究ではベースライン時点で2型糖尿病に罹患していない成人(18歳以上)を対象とし、発症と関連する食事内容が検証されていた。データ抽出および方法に関する質の評価では、Covidence のNHLBI ツールを用いて二重に実施した。

結果: 対象となった研究は、その大半がコホート研究であり(77.9%)、主に西欧、北欧、南欧で実施されていた。果物・野菜・豆類・全粒穀物・発酵乳製品など、加工度の低い食品を多く摂取する食事パターンは、一貫して2型糖尿病の発症リスクの低下と関連していた。逆に、赤肉・加工肉の過剰摂取、砂糖入り飲料、高度加工食品はリスクの上昇と関連していた。地中海食またはプラントベースの食事パターンの遵守はリスク低下と関連していたのに対し、動物性タンパク質を多く含む食事パターンは有害であった。

結論: EUにおける2型糖尿病の発症リスクに関して栄養学的要因は極めて重要である。これまでの研究結果によれば、プラントベース食品や最小限に加工された食品を豊富に含む食事パターンを中心とし、超加工食品や肉類ベースの製品を減らすことが重要である。2型糖尿病の拡大に対処し、実効性のある予防戦略を導くためには、地域ごとの状況に合わせた政策が必要である。

 

原文タイトル:Nutritional Determinants of Type 2 Diabetes Mellitus in the European Union: A Systematic Review

論文著者:Daniela Alejandra Díaz-Benavides, Abdu Nafan Aisul Muhlis, Ghenwa Chamouni, Rita Charles, Digafe Tsegaye Nigatu, Jomana Ben Khadra, Frederico Epalanga Albano Israel, Bashar Shehab, Gabriella Laila Tarek, Aidai Sharshekeeva, Nasser Gammoh, Tulu Tefera Habte, Niyati Chandrika, F K Alshakhshir, Nour Mahrouseh, Carlos Alexandre Soares Andrade, Szabolcs Lovas, Orsolya Varga

公開日: 2025/11/09 

論文URL:https://doi.org/10.3390/nu17223507

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