気候変動対策では、食事ガイドラインで肉類の総摂取量を制限する必要がある—フランスを事例としたモデリング研究

論文概要

 

背景: 世界各国の食品ベースの食事ガイドライン(FBDG)には肉類の摂取量に関する指針が含まれているが、環境への配慮が明示的に盛り込まれることは稀である。例えばフランスでは、FBDG は赤肉を週500g以下、加工肉を週150g以下に抑えることが推奨されている。本研究ではモデリング手法を用い、FBDG が遵守された場合に達成できる温室効果ガス排出量の範囲を検証した。

方法: 2014年に実施されたNutriNet-Santé 調査の参加者29,413名から得られたデータを分析し、フランスのFBDGへの遵守度を評価した。有機食品と従来型食品のそれぞれについて、温室効果ガス排出量・累積エネルギー需要量・土地占有量をDIALECTEデータベースから算出した。最初に、栄養学的に適切で文化的に受け入れられ、FBDG に適合する食事パターンで、温室効果ガス排出量が最小となるモデルまたは最大となるモデルを構築した。次に、温室効果ガス排出量の最小モデルと最大モデルの間で、実際に観察された食事パターンとの差分が最小となる範囲を探索した。その際、他の制約条件は同一とし、温室効果ガス排出に関する制約条件を段階的に変化させた。続いて、環境・経済(金銭的コスト)・栄養・健康リスク(食生活に関連した長期的なリスク)をそれぞれの食事パターンについて推定した。

結果: FBDG に適合して摂取されている栄養素は少なく(平均19%・標準偏差 25%)、温室効果ガス排出量は4.34 kgCO2eq/d(標準偏差 2.7%)であった。栄養・受容度・FBDG に関する制約を一定にした場合、食事に起因する温室効果ガス排出量は 1.16 kgCO2eq/dから6.99 kgCO2eq/d の範囲で変動し、このうち約 85% は食肉消費によるものであった。同様の傾向は累積エネルギー需要量・土地占有量・健康リスクについても見られたが、コストは現実の食事パターンよりも一貫して高く、U字型の変化を示していた。ガス排出量の低い食事パターンでは有機食品の割合が高かったが、肉類を多く使い排出量が高い食事パターンでは有機食品の割合は低かった。総エネルギー量を同等とした場合、排出量が最も低い食事パターンでは野菜・全粒穀物・プラントベース代替食品がより多く含まれていた。

結論: フランスの食事ガイドラインは平均的には気候変動の緩和と健康の増進に寄与しているものの、本研究の結果は、温室効果ガス排出を効果的に削減するためには食品ごとの推奨摂取量を活用する必要があることを強く示唆しており、気候変動への負荷をより適切に評価するためには肉類の総摂取量が重要であることを示している。食事ガイドラインを策定する際には環境に負荷を及ぼす他の要因も考慮する必要がある。

 

原文タイトル:To be climate-friendly, food-based dietary guidelines must include limits on total meat consumption - modeling from the case of France

論文著者:Emmanuelle Kesse-Guyot, Julia Baudry, Justine Berlivet, Elie Perraud, Chantal Julia, Mathilde Touvier, Benjamin Allès, Denis Lairon, Serge Hercberg, Hélène Fouillet, Philippe Pointereau, François Mariotti

公開日: 2025/07/09 

論文URL:https://doi.org/10.1186/s12966-025-01786-9

別のFACTを探す