気候変動対策として肉食を控えることに対する人々の認識

論文概要

 

背景: 肉類の大量消費は健康と気候に悪影響を及ぼしており、多くの国際機関が消費量の削減を推奨している。このスコーピングレビューでは、気候変動を緩和するために食肉消費を削減することについて人々がどのように認識しているか、これまでの調査結果を統合することを目的とする。主な検討項目は以下の3点である。1.食肉消費が気候変動と関連していることを人々が認識しているかどうか、2.気候変動を緩和するために肉の消費を控える意欲があるかどうか、3.この問題を動機として肉の消費を既に控えているのはどのような人々か。

方法: PRISMA ガイドライン拡張版に従ってスコーピングレビューを実施した。5つのデータベース(Medline・Scopus・Embase・Greenfile・PsynDex/CurrentContent/Agris)を用いて関連文献を系統的に検索し、2015年以降に英語・ドイツ語・デンマーク語・オランダ語で発表された査読付き原著論文のみをレビューの対象とした。文献のスクリーニングに関する全ての手続きは2名の研究者が担当した。対象となった原著論文を定量的研究と定性的研究に分類し、そのデータを説明・記述形式で要約した。

結果: 対象となった研究は合計で93件であった。これらの大半は2019年以降に発表された定量的研究で、欧州で実施されていた。食肉消費と気候変動の関連についての一般の認識は低く、多くの人々は食肉消費の削減で気候変動を緩和できることを過小評価していた。女性および既に肉食を控えている人では、肉の摂取量を減らすことへの意欲はより強かった。肉食を控える主な理由は健康と動物福祉であることが多く、ほとんどの人にとって気候変動は副次的な動機であった。しかし、調査に用いた質問票は研究によって異なり、多くの研究でサンプル数が小さいため、研究間での比較と一般化には限界があった。

結論: 今後の研究では、全国規模のサンプルと標準化・検証済みの調査手法を用いる必要があり、気候変動の緩和と肉類の消費削減に対する人々の認識をさらに検証するとともに、より効果的にプラントベース食を推進する方法を明らかにすることが重要である。気候変動対策に対するメディアと政治の関心は高まっており、世界各国において食肉消費の削減に対する人々の認識や意欲、動機の変化を注視していく必要がある。

 

原文タイトル:Perspectives of individuals on reducing meat consumption to mitigate climate change - a scoping review

論文著者:Ramona Moosburger, Almut Richter, Gert B M Mensink, Kristin Manz, Julia Wagner, Katharina Heldt, Julika Loss

公開日: 2025/10/13 

論文URL:https://doi.org/10.1186/s40795-025-01171-6

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