現在の米国で推奨される食事パターンに内在する強制労働のリスク

論文概要

 

持続可能な食生活に関する従来の研究では、人類と地球の健康への影響が問題とされてきた。一方、食料に関わる世界のバリューチェーンでは多くの労働者が雇用されており、こうした環境では強制労働の割合が高いにもかかわらず、これまであまり注目されることはなかった。

米国における食材ごとの消費量に食品に関わる強制労働のリスクを組み合わせ、5つの食事パターン(現在の一般的な食事パターン、米国で特に推奨されている3つの食事パターン、EAT–Lancetプラネタリーヘルス食*)について、食材のバリューチェーンに内在する強制労働のリスクを比較した。

その結果、強制労働のリスクは地中海食および米国で推奨される食事パターンでは強制労働のリスクが最も高く、プラネタリーヘルス食で最も低いことが明らかになった。こうした違いが生じる最大の原因は果物、乳製品、赤肉の消費である。また、推奨されている健康的なベジタリアンの食事パターンを除く全ての食事パターンでは、こうしたリスクのほぼ半分はタンパク質食品によるものであった。

これらの結果は、人類の健康、環境の持続可能性、社会的幸福の間には相乗効果とトレードオフが潜在していることを示しており、この問題は持続可能な食習慣に関する対話と行動の中で検討する必要がある。

* 果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。

 

原文タイトル:Current and recommended diets in the USA have embedded forced labour risk

論文著者:Edgar Rodríguez-Huerta, Brooke M. Bell, Kyra Battaglia, Jessica L. Decker Sparks, Catherine Benoit Norris, Alejandra Sofia Marquez, Zach Conrad, Julia Matteson, Bethany Jackson & Nicole Tichenor Blackstone

公開日: 2025/10/08 

論文URL:https://doi.org/10.1038/s43016-025-01242-8

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