甲殻類の福祉 痛みの研究の歴史と人々の態度の変遷

論文概要

 

甲殻類(エビ・カニ・オキアミなど)の痛覚に関する初期の議論は、推測や逸話に基づくものが多かった。痛覚を調べるための実験では、こうした初期の論争や他の生物種に関する研究が指針とされてきた。多くの実験では甲殻類に痛覚があること示すデータが得られている。しかし、これは痛覚の存在が確実に証明されたということではなく、その可能性が示唆されたということである。痛覚の存在を示す研究が増えるごとにこうした可能性は高まるが、決定的な証拠が得られることはおそらくないと思われる。

反応の中には痛み刺激に対する反射のように見えるものもある。しかし、これらは少なくとも甲殻類が組織の損傷や熱・酸・アルカリ・電気ショックなどの刺激に反応していることを示すものである。こうしたデータには反射では説明できないものがあり、そうした場合に限って痛覚の存在を示すものとされる。このような研究は、PETA・Crustacean Compassion・RSPCA・英国獣医師協会・UFAW・HSAなど、さまざまな組織を鼓舞することになり、甲殻類の福祉を向上させるための取り組みが進められてきた。

また、英国政府のために作成された極めて影響力の高いレビューでは、感覚意識に関するこれらの知見の多くが反映されており、その結果として、十脚甲殻類は2022年の動物福祉(感覚意識)法の対象として含まれることとなった。これは十脚甲殻類に感覚意識があることを認めるものである。一方、ニューヨーク宣言は感覚意識があるという可能性を認めるに留まっている。

甲殻類に痛覚があることに異議を唱える立場もある。それにも関わらず、2022年の動物福祉法は福祉の向上を求める諸団体を力づけるものとなった。現在の英国では、販売するエビの屠殺技術の向上を要求する小売業者もあり、屠殺には電気ショックで気絶させる処置(スタンニング)が推奨されている。

 

原文タイトル:A History of Pain Studies and Changing Attitudes to the Welfare of Crustaceans

論文著者:Robert William Elwood

公開日: 2025/02/06 

論文URL:https://doi.org/10.3390/ani15030445

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