畜産に潜む感染症の罠

The infectious disease trap of animal agriculture

Matthew N Hayek

2022/11/04

https://doi.org/10.1126/sciadv.add6681

論文概要

 

動物に由来する感染症(人獣共通感染症)は、農業による森林破壊に伴って発生した。農業は集約化、すなわち資源利用における効率を高めることにより、土地の利用を削減することができる。しかし、集約された畜産経営では、動物やその排泄物を閉じ込めることが多く、このことはまた疾病の発生を助長している。したがって、動物由来の食品に対する需要の高まりは、人獣共通感染症リスクの「罠」を生み出しているのであり、これには一方では大規模な土地利用があり、他方では畜産動物の集約的管理が関わっている。

集約化の方法のすべてに疾病のリスクがあるわけではなく、閉じ込めを避け、動物の健康を向上させる方法もある。しかし、こうした「ウィンウィン」の改善だけでは、食肉に対する需要、特に鶏肉と豚肉に対して増加しつつある需要を満たすことはできない。集約化された鶏肉や豚肉の生産では、牛肉の生産に比べて多量の抗生物質が使用されており、動物の閉じ込めや飼育される個体数も多くなっている。牛肉から鶏肉への消費を転換することで気候変動による温室効果ガス排出を軽減することはできるが、良く知られたこの戦略では人獣共通感染症のリスクが考慮されていない。

人獣共通感染症を予防するためには、国際的な協調行動が必要であり、動物由来の食品に対する高い需要を減らし、森林保全におけるガバナンスを改善し、反芻動物で最も生産性の低い生産システムを選んで集約化する必要がある。

 

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