畜産動物の情動を認識する人工知能のアプローチ

論文概要

 

世界の畜産動物は700億頭を超え、その多くが大規模で集約的な農場で飼育されるという状況は拡大している。畜産動物に苦痛や恐怖、欲求不満、苦悩といった情動があることについて、科学的知見や社会の認識は高まりつつあり、動物の福祉をモニターするための効率的で正確な手法の開発が急務となっている。

畜産動物の感情や情動の変化を定量的に測定するうえで、科学的に有効性を検証された手法は現時点では存在しない。幸福度を評価する指標にも確立されたものはなく、外傷や痛み、恐怖といった幸福とは逆の状態に関する指標のみが存在する。畜産の福祉をモニタリングする従来の手法は時間がかかり、飼育プロセスを妨げるだけでなく、主観的な判断にも依存している。

人工知能を活用した生体センサーのデータは畜産動物の状態を非侵襲的に監視する新たな手段であるが、動物の情動を定量化することやその応用に向けた画期的な手法は未だ実現されていない。本稿で概観する様々な革新的な手法は、畜産動物の感情についてのビッグデータを収集することで人工知能モデルをトレーニングし、個体レベルの豚や牛の情動に関する分類や定量化、予測を可能にするものである。

これを個体から集団レベルに拡張し、ソーシャルネットワーク分析を応用することで集団レベルでの動物の感情の変化や感情の伝染をモデル化することができる。さらに、近い将来には動物の「デジタルツイン」を実現できる可能性があり、これによって動物の感情や行動をリアルタイムでシミュレーションし予測することができる。

 

原文タイトル:Affective State Recognition in Livestock-Artificial Intelligence Approaches

論文著者:Suresh Neethirajan

公開日: 2022/03/17 

論文URL:https://doi.org/10.3390/ani12060759

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