社会的慣習の転換点に関する実証実験

論文概要

 

社会的慣習の転換点 ある集団が合意に達した後、少数派の見解を持つグループがそれを覆すにはどうすれば良いのか? 理論モデルによればこれには転換点 tipping points があり、少数派が十分な規模になれば社会的規範を変えられるとされている。セントラ Centola らは、この現象を検証するため統制された実験系を考案した。写真に写った人物の名前について集団が合意に達した後、そのメンバーに対して異なる名前を主張する協力者が個別に接触した。ここで与えられたインセンティブは互いに協調することのみだった。協力者の数が集団全体の約25%に達すると、多数派の意見を少数派の意見へと転換することができた。

クリティカルマス理論のモデルは、新たな社会的慣習が出現する際に少数派のグループが引き起こす社会変革のダイナミクスを明らかにしてきた。本研究では、人工的な社会的慣習システムにおいて被験者が相互作用から協調行動における新たな均衡を確立する過程を分析する。ここで得られた結果は、社会的慣習が変化する際のダイナミクスには転換点が存在することを直接的に実証するものである。社会変革を引き起こすのに必要なグループの規模には臨界点があり(クリティカルマス)、少数派のグループがこれに達した場合、既存の行動パターンを常に覆すことができた。現実に必要となるクリティカルマスの規模は、理論的に特定可能な社会環境要因によって変動すると考えられる。本研究の結果は、理論的に予測されたクリティカルマスのダイナミクスが、実証的社会的協調システム内で予想通りに実際に出現することを示している。

 

原文タイトル:Experimental evidence for tipping points in social convention

論文著者:Damon Centola, Joshua Becker, Devon Brackbill, Andrea Baronchelli

公開日: 2018/06/08 

論文URL:https://doi.org/10.1126/science.aas8827

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