積極的動物福祉の定義についての学際的コンセンサス

論文概要

 

動物福祉の概念は、動物の生態に関する科学的理解が進み、社会的な期待が変化するに伴って進化しつつある。これまで動物福祉科学の関心は主に苦痛を最小化することにあったが、近年はポジティブな経験を支えることについて関心が高まりつつあり、こうした考え方は積極的動物福祉(ポジティブ・アニマルウェルフェアPAW)という用語で総括することができる。

とはいえ、用語としてのPAWはさまざまに異なった意味で使われている。学際的な研究グループで得られたコンセンサスによれば、PAWとは動物が概してポジティブな精神状態にあり、自らの能力とレジリエンス(回復力)を伸ばして健やかに生きることとして定義できる。PAWは身体的健康の確保や苦痛の予防・軽減にとどまるものではなく、動物がポジティブな精神状態にあることにまで及ぶものであり、こうした精神状態を産み出すのは満足感を得られる経験である(選択肢や機会を得て目標を能動的に追求し、望んだ結果を達成することなどが含まれる)。この定義では個体差や生物種ごとに異なる様々な差異が考慮されており、これはPAWに関する学術的検証や、革新的で有益かつ再現性のある科学的知見を産出するうえで枠組みとなるものである。

PAWに関する研究は動物の生態をより包括的に捉えるうえで有用であり、幸福の生物学的基盤の解明につながる可能性もある。ここで示した定義は動物生物学における研究の進展を促すものであり、動物の扱いに関連する慣行・法規制・市場を社会が求める水準に合わせて反映させる契機となり得る。

 

原文タイトル:A consensus on the definition of positive animal welfare

論文著者:Jean-Loup Rault, Melissa Bateson, Alain Boissy, Björn Forkman, Bjørn Grinde, Lorenz Gygax, Jes Lynning Harfeld, Sara Hintze, Linda J. Keeling, Lubor Kostal, Alistair B. Lawrence, Michael T. Mendl, Mara Miele, Ruth C. Newberry, Peter Sandøe, Marek Špinka, Alex H. Taylor, Laura E. Webb, Laura Whalin, Margit Bak Jensen

公開日: 2025/01/22 

論文URL:https://doi.org/10.1098/rsbl.2024.0382

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