精密発酵による次世代食材がもたらすプラントベース代替食品の進化

論文概要

 

2050年の世界人口は約100億人に達すると見込まれており、食糧安全保障の問題はさらに深刻となりつつある。食品タンパク質への需要は増大しており、栄養の質を向上させ、環境の持続可能性に対応するためには動物性食品からの転換が求められている。こうした中でプラントベース食品は現状の食料生産システムを代替する最も重要な手段として注目されている。

しかし、プラントベース食品にも問題は存在する。風味豊かで栄養価が高く、タンパク質を多く含むとしても、植物性材料のみから生産される食品が広く消費者から受け入れられているとはいえない。しかし、精密発酵は食料システムの中で成長を続けている領域であり、現在のプラントベース食品を強化・革新し、より栄養価が高く風味豊かで食感に優れた代替食品を産み出す大きな可能性を秘めている。

精密発酵は、酵母・細菌・微細藻類・菌類などの微生物の遺伝子を操作し、タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・フラボノイドといった特定の成分を生成する技術である。プラントベース食品を従来の動物性食品を比べると栄養や風味の点で違いがあるが、精密発酵はこうした問題を解決するうえで極めて重要な手段となる。この技術によって主要成分の生産量を制御することできるだけでなく、出来上がった食品の安全性や品質、持続可能性、(味・香り・外観などの)官能特性を向上させる可能性がある。

精密発酵で製造された材料がプラントベース食品に組み込まれた例として最もよく知られているのは、プラントベース・ハンバーガーに組み込まれたヘムタンパク質であるが、精密発酵にはさらに大きな可能性がある。プラントベース代替食品の官能特性と栄養価を高める食材は、微生物由来の材料から製造できる可能性があり、この総説ではこうした食材を製造する技術の現状について概説する。

 

原文タイトル:Transforming plant-based alternatives by harnessing precision fermentation for next-generation ingredients

論文著者:Daniel Rice, Ranjit Singh, Himani Priya, Johnmel Valerozo, Anil Kumar Anal

公開日: 2025/03/04 

論文URL:https://doi.org/10.1002/jsfa.14168

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