肉のパラドックスから脱出する:食肉にまつわる両面感情に、道徳と嫌悪はどう影響するか

Escaping from the meat paradox: How morality and disgust affect meat-related ambivalence

Benjamin Buttlar, Eva Walther

2021/10/02

https://doi.org/10.1016/j.appet.2021.105721

論文概要

 

食肉生産とその消費は、動物と環境、人間の健康に悪影響を及ぼしている。それにもかかわらず、多くの人は肉を好んで食べる。このいわゆる食肉のパラドックスに気が付くと、人々は嫌悪感を伴った認知的な葛藤を経験する。もしこの葛藤を完全に解消したいのであれば、人々は肉を断つしかない。しかし、肉を食べないということは、肉を食べたいという誘惑に抗い、社会規範に挑戦しなければならないため、厳しいものである。そこで我々は2つの事前登録研究を実施し、このような障害を人々がどのように克服するかを調査した。これに関して、以下のような仮説を立てた―人々は、両面的ではない一つの明確な態度を形成することで認知的な一貫性を確立する。(認知的葛藤を解消する)この過程は快さを伴った転換として経験され、道徳的感情である嫌悪感によってさらに促進される。

研究1では、食事において道徳的目標を追求する菜食主義者(ヴィーガン・ベジタリアン)は、食肉に対してより強い嫌悪感をより報告し、このことは食肉についての両面感情の減少と関連していた。研究2では、食肉に対する嫌悪感が、食肉についての両面感情の低下にやはり関連していた。すなわち、菜食主義者と雑食の参加者はいずれも、食肉生産における劣悪な衛生状態について書かれた文章を読んだ後、同様に強い嫌悪感を訴えた。このような身体的嫌悪に加え、食肉生産における動物虐待に関する文章を読んだ場合にも嫌悪感は高まった。しかし、後者のような道徳的嫌悪が誘発されたのは、自らの行動が害を及ぼしていることに向き合おうとする人々、すなわち、動物には比較的高い感情的・精神的な能力があると考える人々のみであった。研究2の後半の結果はやや探索的なものではあるが、以上の知見は全体として、道徳と嫌悪によって認知的な一貫性が促進されることを示唆している。従って、これらのプロセスは、肉を食べない食生活を選択し、維持していく上で極めて重要な役割を果たす可能性がある。

 

別のFACTを探す