肉を減らす意思と行動のギャップ 食生活の変化における認知的不協和の影響

論文概要

 

食料システムをプラントベースに転換することは極めて重要であり、気候変動を緩和し、公衆衛生を向上させ、さらに動物の苦しみを減らすことにつながる。こうした利点があることへの理解は進みつつあるが、食肉の消費量はほとんどの先進国で高い水準にとどまっている。また、多くの人々が肉食を減らそうとしているが、実行に移すのは容易ではない。

この縦断研究では行動変容のステージモデルおよび認知的不協和* の理論をもとに、人々がベジタリアン食を採り入れる際の心理メカニズムを検証した。研究の結果からは、行動を変えることへの意欲や肉を減らすうえでの様々な障害、食生活の変化に至る各段階において認知的不協和が強く関わっていることが明らかになった。

ベジタリアン食への移行に成功した人は、強い認知的不協和を経験していたが、肉を減らすことが健康に及ぼす影響への懸念や食生活を変えられるかどうかという不安は次第に弱まっていた。一方、肉を減らす意欲があるにもかかわらず肉食を止められない人は、食生活を変えることが困難と感じており、プラントベース食品の利点に関してはあまり理解していなかった。

肉類の消費を減らす際に人々が経験する心理面や実践面の障害に取り組むためには行動変容の各段階に応じた対策が必要である。本研究の結果は政策立案者や業界関係者がこうした介入策を計画するうえで有用であり、

より持続可能で倫理的な食料システムへの移行を支援するものである。

* 自らの価値観と実際の行動が矛盾する際に人が感じる不快感。ここでは、健康や環境、動物福祉の問題を意識しながらも肉を食べ続けることに伴う葛藤を指す。

 

原文タイトル:Understanding the intention-behaviour gap in meat reduction: The role of cognitive dissonance in dietary change

論文著者:David Fechner, Sebastian Isbanner

公開日: 2025/06/19 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2025.108204

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