赤肉の長期摂取と認知症リスクの関連性 米国成人における前向きコホート研究

論文概要

 

背景・目的: 従来の研究では、赤肉の摂取量と認知機能の関連に関して一致した結果が得られていない。本研究では、赤肉の摂取量と様々な認知機能アウトカムの関連について検証した。

方法: この前向きコホート研究ではベースライン時点で認知症に罹患していない人を対象とし、米国における全国規模のコホート研究である看護師健康調査(NHS)および医療従事者追跡調査(HPFS)から参加者のデータを抽出した。参加者の食生活に関する評価では、半定量的な調査法として確立されている食物摂取頻度質問票を用いた。新たに認知症を発症した症例は、NHS(1980-2023年)およびHPFS(1986-2023年)の参加者の中で確認された。客観的な認知機能に関してはNHS参加者の一部を対象とし、「認知機能に関する電話調査」のデータ(1995-2008年を用いて評価した。自覚的な認知機能の低下(SCD)の有無については、NHS(2012年・2014年)およびHPFS(2012年、2016年)の参加者からの自己申告に基づいて評価した。赤肉の摂取量と認知機能アウトカムの関連性について、Cox比例ハザードモデル・一般線形回帰モデル・ポアソン回帰モデルを用いて検証した。

結果: 認知症に関する分析では133,771名(女性65.4%)を対象とし、ベースライン時の平均年齢は48.9歳であった。客観的な認知機能に関する分析では17,458名の女性を対象とし、ベースライン時の平均年齢は74.3歳、SCDに関する分析では43,966名(女性77.1%)を対象とし、ベースライン時の平均年齢は77.9歳であった。

加工された赤肉を1日あたり0.25食以上食べる人では、0.10食未満の人と比べて認知症を発症するリスクが13%高く(ハザード比[HR]1.13;95%信頼区間[CI]1.08-1.19; 線形性p < 0.001)、SCDのリスクは14%高かった(相対リスク[RR]1.14;95%信頼区間 1.04-1.25;直線性検定 p = 0.004)。

加工された赤肉の摂取量が多い人では、全般的な認知機能および言語性記憶において老化が進行し(いずれも線形性p = 0.03)、前者では1日あたり1食増えるごとに1.61年[95% CI 0.20-3.03])、後者では1.69年 [95% CI 0.13-3.25]に相当する老化の進行が見られた。

未加工の赤肉を1日あたり1.00食以上食べる人では、0.50食未満の人と比べてSCDを発症するリスクが16%高かった(RR 1.16; 95% CI 1.03-1.30; 線形性p = 0.04)。加工された赤肉の1食分をナッツ・豆類に置き換えた場合、認知症のリスクは19%低下し(HR 0.81, 95% CI 0.75-0.86)、加齢に伴う認知機能の低下は1.37年遅くなり(95% CI -2.49~-0.25)、SCDのリスクは21%低下した(RR 0.79, 95% CI 0.68-0.92)。

考察: 赤肉の摂取量が増えるほど認知症を発症するリスクは高くなり、認知機能の低下する傾向があり、加工された赤肉ではこの傾向は特に顕著であった。赤肉の摂取量を減らすことは、認知機能の健康を増進するために食事ガイドラインに採り入れて良いと考えられる。今後の研究では、これらの結果が様々に異なる民族集団に一般化できるかどうかを検証する必要がある。

 

原文タイトル:https://doi.org/10.1212/wnl.0000000000210286

論文著者:Yuhan Li, Yanping Li, Xiao Gu, Yuxi Liu, Danyue Dong, Jae Hee Kang, Molin Wang, Heather Eliassen, Walter C Willett, Meir J Stampfer, Dong Wang

公開日: 2025/01/15 

論文URL:https://doi.org/10.1212/wnl.0000000000210286

別のFACTを探す