赤肉・加工肉に代わる代替タンパク源の潜在的可能性 シミュレーションとシステマティックレビュー

論文概要

 

背景: 食習慣は人間の健康と地球環境の健全性に強く関わっているが、赤肉と超加工食品の消費量は世界的に増加しつつあり、悪影響を及ぼす可能性は高い。

方法: 西洋化した先進国の事例としてニュージーランドに関するデータを使用し、赤肉と加工肉を代替する5つのシナリオをモデル化した。健康・公平性・温室効果ガス排出量・コストへの影響について、多相生命表モデルを用いて推定した。現在の赤肉・加工肉からの摂取分を置換するシナリオでは、代替食品として以下の5種類について検討した:最小限の加工を施したプラントベース代替肉、超加工されたプラントベース代替肉、培養肉、EAT-Lancetまたは心臓財団 Heart Foundationが推奨する赤肉の摂取量に従う食事パターン。

次に、既存の知見を系統的に検証するため、データベースの創設から2022年11月14日までの関連文献を検索した。肉類を代替するために現実の人口集団で実施された戦略を抽出し、シミュレーションで得られたベネフィットを実現可能でエビデンスに基づく指針があるかどうかを調べた。

結果: 肉類を代替する全てのシナリオは、現在の赤肉・加工肉の消費量と比べて栄養的には十分であり、全体的な質調整生存年(QALY)は向上していた(モデル化した5つのシナリオにおいて生涯で1000人あたり159~297年)。年齢で調整した場合、一人当たりの健康増進効果はマオリ族では非マオリ族の1.6~2.3倍であった。医療システムにおけるコストの削減幅は成人1人あたり2530~5096ドルとなり、温室効果ガス排出量は19~35%減少した。

現状と比較した場合、食料品にかかるコストはシナリオによって異なり、7%の減少から2%の上昇までの範囲で変動していた。全てのアウトカム指標において最も大きなベネフィットを実現できるのは、豆類など最小限の加工を施したプラントベース食品を用いるシナリオであった。関連文献の検証では、肉類の消費を減らすために集団レベルで導入された戦略として確認できたのは2例のみであった。

解釈: 肉類を代替する5つのシナリオを検証した結果、その全てにおいて健康を増進する効果は大きく、温室効果ガス排出量も大きく削減できることがわかった。最小限の加工を施したプラントベース食品で肉類を代替するシナリオは、他のシナリオに比べて一貫して優れていた。しかし、現時点では、現実の社会においてこうした便益を実現できるような戦略に関する知見は不足している。

 

原文タイトル:The neglected potential of red and processed meat replacement with alternative protein sources: Simulation modelling and systematic review

論文著者:Andrew N Reynolds, Cliona Ni Mhurchu, Zi-Yi Kok, Christine Cleghorn

公開日: 2022/12/14 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2022.101774

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