農業・食品への補助金と食習慣の関連 スイスにおける推計

論文概要

 

農業は世界の温室効果ガス排出に大きく関わり、他にも環境に大きな影響を及ぼしている。農業政策の現状はこうした影響を容認するものであるが、それだけではなく、補助金を通じて持続不可能な生産システムや製品を支援することで問題をさらに悪化させている場合もある。農業分野および食品分野に移転される金額は食事スタイルによって異なるが、本研究ではこうした状況を踏まえて、移転によって生じる金額の違いを検証した。

スイスに関するデータを用い、政府補助金を通じて直接に移転される額と、環境への影響と外部費用を容認することで間接に移転される額について検討した。全体的な移転額を先行研究に基づいて以下のように定量化した:(i) さまざまな食品群の消費量に基づいて食事パターンを8種類に分類(平均的・肉食中心・フレキシタリアン・ヴィーガンなど)、(ii) 農業向け補助金のうち、それぞれの食品群に配分されている金額を算出、(iii) 環境への影響をライフサイクルアセスメントの手法を用いて食品群ごとに算出、(iv) (農業生産に伴う)環境破壊を防ぐための政策的な支出額から農業に起因する外部費用を推定。

続いて、各食事パターンについて政府から個人に移転される純額を定量化するため、個人に配分される補助金および外部費用として個人が負担する平均額を合計し、その合計額から個人が支払う税額を差し引いた。

その結果、政府から農業に移転される総額は、食事パターンによって異なるが、納税者・消費者1人あたり年間約500 スイスフラン(CHF)から約2000 CHF の範囲であることがわかった。一方、納税者・消費者1人あたりに支払われる純額は、食事パターンと所得によって異なるが、およそ -1000 CHF から+1000 CHF の範囲であった。

これらの推計値から、現行の政策では環境に配慮した食事スタイルよりも環境的に問題のある食事スタイルが大きく優遇され、結果的に支援されていることが明らかとなった。これは環境と公衆衛生における政府の戦略や目標と矛盾するものである。

 

原文タイトル:Linking Subsidies for Agriculture and Food to Dietary Styles: Estimates for Switzerland

論文著者:Felix Schläpfer and Michael Lobsiger

公開日: 2023/07/02 

論文URL:https://doi.org/10.3390/su151310428

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