長期培養で自発的に起こる牛線維芽細胞の不死化は、培養牛肉のための非形質転換細胞源を提供する

論文概要

 

自発的に不死化した細胞株は、培養肉生産に必須となる非形質転換細胞を用いた原料である。これまでの研究では鶏の線維芽細胞が培養で容易に不死化するのに対し、牛の線維芽細胞はTP53遺伝子やTERT遺伝子を操作しない限り不死化することはないとされてきた。

本研究では、シンメンタル種およびホルスタイン種の雌牛に由来する線維芽細胞株が自発的に不死化することを実証する。500日間の培養は細胞が240回倍加する期間に相当するが、細胞の不死化に関わる分子基盤をこの期間に追跡した。細胞は60回の倍加で老化状態に進み、γH2AXフォーカス、テロメア短縮、老化関連性分泌表現型の活性化が見られた。

培養400日後に起こったブレイクスルーにより、安定した線維芽細胞株が得られた。老化過程におけるテロメラーゼとPGC1αの活性化によってテロメアの短縮とミトコンドリアの機能障害が解消されたが、P53が活性化することはなく、自発的な不死化を促進した。

自発的に不死化した牛線維芽細胞を用いて培養牛肉を生産することができるのか、経済的に見たその可能性について検証した。その結果、連続生産を行えば理論上は価格競争力を実現できることが示された。

 

原文タイトル:Spontaneous immortalization of bovine fibroblasts following long-term expansion offers a non-transformed cell source for cultivated beef

論文著者:Laura Pasitka, Merav Cohen, Shaun Regenbaum, Avner Ehrlich, Boaz Gildor, Ariel Gold & Yaakov Nahmias

公開日: 2025/11/12 

論文URL:https://doi.org/10.1038/s43016-025-01255-3

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