食の重要性: 食習慣の転換はパリ協定の1.5℃目標の実現可能性を高める

論文概要

 

EAT-Lancet食*をはじめとする健康的な食習慣への移行により、温室効果ガスの排出量を大幅に削減できる可能性がある。しかし、食習慣を変えることが1.5℃目標の達成にどのように寄与するのかは明確ではない。本研究ではオープンソースの統合的評価モデルである REMIND-MAgPIE を用いて、食習慣の転換がある場合とない場合で1.5℃ 目標に向けたシナリオを比較した。

その結果、フレキシタリアン食がパリ協定の気候目標を達成する可能性を様々な側面で高めることがわかった。このように食習慣を転換することで温室効果ガス、特に反芻動物の腸内発酵によるメタン排出量が減少すると、1.5℃目標に見合った炭素収支が増加することになる。

したがって、食習慣が移行した場合、大気中から除去する二酸化炭素の量を減らし、エネルギーシステムにおける排出量制限を緩和したとしても気候への影響に関しては同等のアウトカムを達成することが可能であり、温室効果ガス価格やエネルギー価格、さらに食料価格の上昇を軽減することができる。

** プラネタリーヘルスダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。

 

原文タイトル:Food matters: Dietary shifts increase the feasibility of 1.5°C pathways in line with the Paris Agreement

論文著者:Florian Humpenöder, Alexander Popp, Leon Merfort, Gunnar Luderer, Isabelle Weindl, Benjamin Leon Bodirsky, Miodrag Stevanović, David Klein, Renato Rodrigues, Nico Bauer, Jan Philipp Dietrich, Hermann Lotze-Campen, Johan Rockström

公開日: 2024/03/27 

論文URL:https://doi.org/10.1126/sciadv.adj3832

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