論文概要
食料消費は世界中で人々の生命に大きな影響を与えており、額面上の価格を上回るコストが実際には発生している。しかし、食料消費が健康にもたらす影響によるコストはこれまでに明確に定量化されておらず、食料価格にも反映されていない。本稿では疾病コストと真のコスト会計(TCA)*1の手法を用いて、栄養摂取と食生活が健康に及ぼす外部コスト*2を算出する方法を開発した。ここではドイツの場合を例にとって健康に関する外部コストを計算した。
その結果、栄養に関するさまざまな危険因子のために、健康に関する外部コストとして国民一人当たり年間 601.50ユーロ、総額で 503.8億ユーロが発生していることがわかった。全体として、コストのほとんどは肉の過剰摂取(総額の32.56%)、全粒穀物の摂取不足(15.42%)、豆類の摂取不足(10.19%)によって生じている。
健康に関する外部コストと環境に関する外部コストを比較すると、年間の外部コストの総額である約 1,538億6,000万ユーロのうち、環境への影響から発生するものが 67.26%、健康への影響から発生するものが 32.74%となっている。国連の「持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals (SDGs)」における17の目標を達成し、家庭と社会全体の健康を向上させるためには、こうした外部コストを実際の食品価格に内部化する必要がある。
* 食の真のコストと価格に関しては以下を参照 https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210625 *2 生産者または消費者の活動によって、市場取引の場では価格に反映されないが、社会全体として負担する費用を指す
Felix Seidel, Benjamin Oebel, Lennart Stein, Amelie Michalke, Tobias Gaugler
2023/07/30
The True Price of External Health Effects from Food Consumption