食肉消費の削減に関する普遍的な真実とは

論文概要

 

レビューの目的: 現在の食肉生産・消費は高い水準にあり、健康と環境に与える影響は世界的に深刻な問題となっている。こうした状況に対処する手段の一つは、プラントベース食品をより多く用いた食習慣へ移行することである。食肉消費には複数の要因が影響しており、これには個人レベルの要因、社会文化や経済に関する要因、食環境の特性などが含まれる。必要とされる食習慣の移行を支援するため、数多くの介入研究でこうした要因についての検証が進められているが、こうした要因が食習慣に及ぼす影響の大きさや介入策の有効性は、地理的環境によって異なる可能性がある。本稿では先行研究を検証し、以下の問題について解説する。1.肉の消費削減に関する従来の介入研究において、地理的な条件はどの程度まで考慮されているか、2.地域や国に関わらず、食肉消費を効果的に削減できる普遍的な要因を現在の知見から特定できるか。

最近の知見: 文献の検証からは主に3つの知見が得られた。第一に、これまでに得られた研究結果は主に欧州と北米に限られたものであり、急成長するアフリカやアジアなどの地域では食肉消費が増加しているにもかかわらず、ほとんど検証されていない。第二に、消費者への情報提供による介入策では、環境問題を取り上げるよりは、食肉消費が健康に与える悪影響に焦点を置くほうが有効であると思われる。ただし、国際的な比較研究は不足しており、がん・心血管疾患など、具体的にどの疾病が最も大きく関わるかについては十分に検証されていない。さらに、社会規範を掲げる介入策は多くの国々で食肉の消費削減に有効と思われるが、効果的な介入手段の設計や基準となる集団に関する国際間比較は行われていない。第三に、社会規範を訴える介入では各地域の状況に合わせてメッセージの内容を調整することが多いものの、それ以外の介入手法の大半は標準化されたアプローチを用いているため、地域の状況にあまり適合していないことが多い。

要旨: 国際間での比較研究が不足していることから、異なる地域や国々に共通する普遍的な要因を明らかにした実証的知見は乏しい。また、個人や社会文化による要因、外的な要因による影響が地域の状況によって異なるかどうかも未だ明らかとは言えない。従って、今後の研究では地域ごとの状況に合わせた介入策を国際間比較によって検証する必要がある。

 

原文タイトル:Universal Truths about Reducing Meat Consumption?

論文著者:Tatjana Kwasny, Sarah Marth, Karin Dobernig, Petra Riefler

公開日: 2025/09/18 

論文URL:https://doi.org/10.1007/s40572-025-00498-3

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