養豚生産における外部コスト間のトレードオフは回避可能である

論文概要

 

畜産では様々な外部コストが発生し、それらは互いに負の相関関係にあるとされるが*1、こうしたトレードオフを体系的に定量化した研究は乏しい。世界の養豚生産における代表的な飼育方式には、屋内集約型から牧草地での放牧型、有機畜産や林間放牧によるものがあり、本研究ではこれらの生産システムに関して、英国とブラジルのデータを用いて主な外部コスト4領域*2の関係を検証した。

特定の飼育方式が全ての領域で一貫して良好なパフォーマンスを示すことはなかった。全般的に土地利用が少ない方式では温室効果ガスの排出量は低下するものの、抗生物質の投与量は増え、動物福祉は悪化する。これとは逆の場合にもこうした関係が見られた。

全ての領域で良好なパフォーマンスを示す飼育方式は存在したが、これは特定の方式に限られてはいなかった。本研究の結果はトレードオフが回避可能であることを示唆しており、そのためには単に飼育方式を変えるのではなく、個別の飼育方式において影響を低減する対策が必要である。

*1 例えば、淡水利用と温室効果ガス排出には負の相関があり、対策によって一方を改善すると他方が悪化するとされる *2 土地利用・温室効果ガス排出量・抗生物質投与量・動物福祉の4領域を指す

 

原文タイトル:Trade-offs in the externalities of pig production are not inevitable

論文著者:Harriet Bartlett, Márcia Zanella, Beatriz Kaori, Leandro Sabei, Michelle S Araujo, Tauana Maria de Paula, Adroaldo J Zanella, Mark A Holmes, James L N Wood, Andrew Balmford

公開日: 2024/04/11 

論文URL:https://doi.org/10.1038/s43016-024-00921-2

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