魚類の福祉を包括的に検証するための機能評価フレームワーク

論文概要

 

魚類の福水産物の生産量は、今後の数年間で大幅に増加すると予測されている。集約化が進む生産システムで飼育される動物の福祉に関しては、倫理上の観点から長く懸念が持たれており、水産業におけるこうした集約化は社会問題となり、政策をめぐる議論に影響する可能性がある。

魚類の福祉に関する従来の手法では、身体や生理機能に関する指標、あるいは行動機能の指標を用いて生物学的な機能不全を計測し、健康や身体の状態を評価してきたが、こうした手法には明らかに限界がある。これに対し、情動に基づく評価手法は、行動指標を用いて情動の状態を推定するもので、動物福祉の研究では広く採用されているが、魚類ではあまり用いられてこなかった。

判断バイアスを利用した手法をはじめとする最近の進歩により、魚類の情動を計測する信頼性の高いツールが利用可能となり、これによって健康や生物学的機能に関する指標を情動に関する指標と統合し、魚類の福祉を総合的に評価することができる。多層的アプローチは、単一のエビデンスに依拠するのではなく様々な要素から福祉の状態を検証するもので、魚類の福祉を包括的かつ厳密に評価することができる。

本稿では魚類の福祉に関する指標を統合するとともに、機能評価のための新たなフレームワークを提案するものであり、これによって情動の状態を厳密に評価すると同時に他の補完的な指標を総合的に検証することができる。こうしたアプローチは、現代の倫理および科学に基づいた基準に従いつつ、魚類福祉の概念を明確化し、その推進を目指すものである。
 

 

原文タイトル:A functional framework for a comprehensive study of welfare in fishes

論文著者:Maria Victoria Alvarado, Jose Miguel Cerdá-Reverter, Felipe Espigares

公開日: 2025/10/08 

論文URL:https://doi.org/10.1098/rspb.2025.1833

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