オーストラリアにおける植物性代替肉の動向とこれから

論文概要

 

この論文では、オーストラリアの植物性代替肉(PBMA)について、消費者の受容性、栄養面、環境への影響、政策支援といった課題から、その可能性を十分に発揮するために改善できることは何か、の分析を行っている。

オーストラリアにおける植物性代替肉(PBMA)市場もグローバルな動向と同様、健康に良いこと、持続可能性へのニーズの高まりによって、成長を続けている。

持続可能性については、既に多くの国で多くの製品カテゴリーに対し研究がなされており、その根拠は強固なものとなっている。PBMAが肉製品と比較して持続可能性の面(土地利用、エネルギー消費、気候変動への影響、温室効果ガスの排出、水の使用量など)で劣っていると示すような評価は存在しない。

一方の健康面については、植物性の食事が健康に良いことを示す研究はされているが、PBMAは「超加工食品」に分類されるため、植物性であることをもって同様の効果を持つとは言い切れない。タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素については肉製品と同等であることを示す研究が出ている一方、その他の栄養素については、市販されているPBMAでは、まだ必須ミネラル・ビタミンを欠いているものが多い。

この論文では、PBMAが「超加工食品」であることから、製品の配合を工夫することで、鉄、亜鉛、ビタミンB12などの栄養素を強化し、全体的な栄養の質を高めることは可能だ、と述べている。

市販されているPBMAは、タンパク源として、大豆、エンドウ豆、小麦、ヒヨコ豆、オーツ麦、米、ソバなどを使用している。食品業者によって、コスト、入手し易さ、栄養、加工技術、タンパク質の精製方法、美味しさ、アレルギーリスクといった要素を加味して、何をタンパク源とするか決定されており、現状では大豆が最も多く使用されている。

・コスト

コスト面では小麦が最も安価であり、また、大豆、エンドウ豆が優位、米がそれに続いて優位となっている。ヒヨコ豆、ソラマメ、ムング豆、ジャガイモは大豆やエンドウ豆と比較すると5倍から10倍ほどのコストがかかるため、PBMAの原料として使用すると製造コストの上昇に繋がってしまう。

・入手し易さ

2022年の世界の大豆輸出額は約343億9,000万米ドル、2021年の世界のエンドウ豆の市場規模は約4億6,440万米ドルと推測されている。

スウェーデンでは、土地が大豆の栽培に適していないことから、地元産の黄エンドウ豆、ソラマメを使用してPBMAを製造を試みる研究がなされている、といった例のように、今後、その国における製品の持続可能性を高めるため、地元産の植物性タンパク源を取り入れる動きは増えてくるかもしれない。

・栄養

近年では、タンパク質の質を評価するのに、DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)が使われており、大豆、エンドウ豆、小麦のDIAAS値はそれぞれ91、70、48と算出されている。大豆と小麦を9:1の割合で合わせるとDIAAS値は90、エンドウ豆と小麦を6:4の割合で合わせるとDIAAS値は85となっている。

既に研究によってDIAAS値が100に達する植物性タンパク質の組み合わせは幾つも提案されており、配合を工夫することで、PBMAのタンパク質の質はより高めることができることを示している。

また、タンパク質以外の鉄、亜鉛、ビタミンB12といった必須栄養素も十分に含むことは重要であるが、2019年オーストラリアで行われた市販されているPBMA製品の調査では、まだその強化が不十分であることが分かっている。改善策として、栄養を強化するための規制の導入が挙げられている。微細藻類は栄養的に優れているため、PBMAへの配合が検討されているが、生産・栽培、抽出・加工する技術的困難さがボトルネックになっている、ともされている。

・加工技術

従来の低水分押出成形による方法から、近年、高水分押出成形技術を用いた方法についての研究が増えている。オーストラリア国内の食品メーカーでこの新しい技術を用いているケースはまだ少ないが、導入・普及により、使用される植物性タンパク質の幅が広がっていくことが期待される。

論文ではその他幾つかの別の加工技術について挙げているが、実用化の目途が立っているものは、まだ少ない。

・タンパク質の精製方法

湿式抽出タンパク質は水や有機溶媒を必要とし、エネルギー消費も大きいが、それと比較して、精製度の低い、乾式抽出タンパク質は、持続可能性やタンパク質の機能性の面で有利であり、今後は後者の利用が増加するだろうと予測されている。また、研究によって、乾式抽出タンパク質は、再度水を加えて作られる製品にジューシーな口当たりをもたらすことが確認されている。

ただし、移行にあたってはPBMAメーカーにとって商業的に実現可能と判断されなくてはならない。

・美味しさ

食品の味は、消費者が食品を選ぶ際に最も重要な要素の一つであり、PBMAのように他の食品の特性を模倣することを目的とした製品においては、特に重要である。

大豆については、消費者に好まれない豆臭さを持つことがあるが、これは、幾つかの関連論文も出ており、既に克服され、PBMA配合における大豆の優位性にも繋がっている。

エンドウ豆については、土っぽい、干し草のような、あるいは豆臭さを持つことがあるが、Beyond Meat社の人気商品Beyond Burgerはエンドウ豆タンパク質を使っており、グローバル市場でもリーダー的存在となっていることから、実際には克服されていることが分かる。

その他、ソラマメ、ヒヨコ豆、微細藻類についても研究は行われており、中にはまだ研究が少ない分野もあるが、より研究が進み知見が深まるにつれ、市販されるPBMAの配合は多様化する可能性がある。

・アレルギーリスク

大豆、小麦にはアレルギーリスクがあることが知られており、エンドウ豆、ソラマメは、大豆の代替として研究が行われている。しかし、エンドウ豆タンパク質の摂取機会が増えることで、将来的に一般的なアレルゲン食品と見なされる可能性の予測もある。

ヒヨコ豆は低アレルギー性であるが、タンパク質抽出の最適化など、他の要因によって普及が妨げられている可能性が高い。

現状、PBMAの配合において原料を選ぶ際に、アレルギーリスクは特別重視はされてはいないが、将来的に製品の差別化を図る上で、市場性のある製品の要素の一つになってくる可能性がある。

論文では、これらのことを踏まえ、ではどうすればオーストラリアでのPBMA製品がポテンシャルを発揮することができるのか?を述べている。

PBMA製品は従来の肉製品の代替として設計されているので、タンパク質などの主要栄養素のほか、鉄、亜鉛、ビタミンB12などのミネラル・ビタミンにおいても同等の栄養を確保することは生産者と消費者の双方にとって有益であるが、現時点ではまだオーストラリア市場でそのような製品は少数派である。

これは、オーストラリア政府がPBMAを「Healthy Food Partnerships Reformulation Program(健康食品改革プログラム)」に含めることで容易に達成できる、としている。オーストラリア国内で販売されるPBMAが肉製品と栄養面で同等となることを保証することで、製品の実際の健康面での価値と、消費者が抱く健康に対するイメージとを一致させることができる。

論文では、もし一部のPBMA製品に栄養不足があることで消費者がPBMAは不健康だと判断してしまうと、他の製品も評判を受けてしまう可能性があるため、このことは非常に重要である、と述べている。

また、オーストラリアにて、PBMAの配合に特化して使用するタンパク質濃縮物、分離物製造に向けた研究を更に進めていくべきであり、研究にあたっては、既にオーストラリアで栽培されている植物を特にタンパク源として利用していくべき、としている。

また、多糖類や藻類由来の脂肪酸などの天然の機能性成分を活用することで、風味や食感の向上、栄養価の強化が期待できる、とも述べている。

PBMA用タンパク質濃縮物、分離物の製造には、エネルギー使用量が少なく、廃棄物の発生が少なく、溶媒の使用も少量または不要であり、またタンパク質の機能性を損なう恐れの低い、「グリーンプロセシング」の方法が望ましいとして、関連文献を紹介している。

また、植物原料の加工を海外で行わず、オーストラリア国内で行うことについても、持続可能性を高める戦略として挙げている。そうすることで、国内外の市場に合わせた製品を開発でき、食料安全保障の向上にもつながり、また、農家、食品製造業者、食品加工業者の連携を促進し、新たな品種や植物性製品向けの加工原料の開発にも繋がる、としている。

 

原文タイトル:Are plant-based meat analogues fulfilling their potentials? An Australian perspective

論文著者:Owen Miller a , Christopher J. Scarlett a, Benu Adhikari b, Taiwo O. Akanbi

公開日: 2024/01/27 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.fufo.2024.100305

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