論文概要
(要約)この論文では、実験的に用意されたオンラインスーパーにおいて、商品の配置/スコアラベル表示を取り入れることで、健康的な、もしくは環境に良い持続可能な商品の選択に繋がるのか、実験、分析を行っている。
食事に関するリスクが英国における早死の要因になっていること、食料システムは世界の温室効果ガス排出量の主要な発生源であること、気候変動での高温による心血管疾患や呼吸器疾患の増加との関連、などといった事例のように、より健康的に、環境に良いサステナブルな食事に移行していくことは、急務となっている。
実験の概要
以下は、行った実験の概要になる。
実験参加者は5つの群のいずれかで疑似的な買い物を行い、配置及びスコアラベル表示の影響の有無の調査を行っている。(2024年3-4月)実験の参加者は18歳以上の英国在住の人となっている。
比較対象群 | 介入群 | ||||
| 健康配置 | エコ配置 | 健康ラベル+健康配置 | エコラベル+エコ配置 | ||
| 価格マッチラベル表示 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 配置 | ◆ | ▲ | ◆ | ▲ | |
| 健康ラベル | ◆ | ||||
| エコラベル | ▲ | ||||
◆:より健康的な食品選択のための介入
▲:より環境に良い持続可能な食品選択のための介入
・比較対象群
・介入群:健康的な商品を先に表示するよう配置
・介入群:健康的な商品を先に表示するよう配置+栄養スコアラベル表示(nutri-score labels)
・介入群:持続可能な商品を先に表示するよう配置
・介入群:持続可能な商品を先に表示するよう配置+エコスコアラベル表示
※実験は、実験参加者が求められている行動を推測してしまうバイアスが働かないよう、商品の10%に、ランダムに価格マッチラベルを付与している。

健康配置/健康ラベル表示/エコ配置/エコラベル表示は、それぞれ以下のように説明されている。
・健康配置:オンラインスーパーにて、健康的な商品がより早く表示されるように配置
・健康ラベル表示:A/B/C/D/Eで表示(前者ほどより健康的)
・エコ配置:環境に良い持続可能な商品が、より早く表示されるように配置
・エコラベル表示:A/B/C/D/Eで表示(前者ほどよりエコ)


※エコラベルのスコアは、GHG(温室効果ガス)排出量、希少性を考慮した水使用量、生物多様性の損失、富栄養化といったデータを組み合わせて算出
以下が実際の表示例となっている。

実験参加者は、用意されたオンラインスーパーにて、「惣菜パイ(savoury pie)もしくはキッシュ」「チーズ」「冷凍ピザ」…といった予め指示された買い物リストに対し、商品を1つずつ選択する。
原論文内では、詳細なオンラインスーパーの表示の仕様、実験参加者の性別、各年齢層の割合、教育レベル、所得、肉を食べる頻度、ベジタリアン/ヴィーガンの食事をしているか、ここ1年でのオンラインショッピング経験、食の持続可能性の重要性への理解、等
といった質問への回答結果の情報が記載されており、調査内で、普段ベジタリアン/ヴィーガン食をしている人の割合は7.2%だった。
実験結果
各参加者の選んだ商品の入った買い物かごの結果をもとに、健康スコア、エコスコアを算出し、スコアを線形回帰モデルを用いて比較、有意水準はBonferroni補正を行い、p < 0.005としている。
また、より詳細に、
・買い物かごの平均エネルギー密度(kcal/100g, kcal/100ml)、平均塩分量、平均脂質量、平均糖分量
・買い物かごの各平均温室効果ガス排出量、水使用量、生物多様性損失、富栄養化の可能性
も算出している。
以下、買い物かご内の健康スコア・エコスコアの平均値、標準偏差の結果が表にまとめられており、健康配置、健康配置&健康ラベル表示のケースは比較対象群と比べて、優位に健康スコアは良い結果となっている。
健康配置と、それに健康ラベル表示を加えた場合とで、有意な差は現れなかった。
論文には回帰分析を行った結果も載っているが、結果は同じ傾向となっている。
| 健康スコア平均値(標準偏差) | エコスコア平均値(標準偏差) | |
| 比較対象群 | 35.71(3.53) | 4.67(2.17) |
| 健康配置 | 33.41(3.57) | 4.52(2.04) |
| 健康配置&健康ラベル表示 | 33.21(3.96) | 4.64(2.12) |
| エコ配置 | 37.19(3.98) | 3.68(2.05) |
| エコ配置&エコラベル表示 | 36.66(3.74) | 3.40(1.96) |
エコ配置、エコ配置&エコラベル表示についても、比較対象群と比べて、優位にエコスコアは良い結果となっており、論文内では、平均温室効果ガス排出量、生物多様性損失、水使用量、富栄養化のリスクをいずれも低く抑える結果が出た、と述べている。
性別、年齢層、教育、所得、肉の消費量、また、健康/環境意識が今回の商品配置/ラベル表示による実験の結果に与える影響については、有意には見られなかった。
健康配置/健康ラベル表示が、買い物に対してエコスコアに影響を与える、という結果は得られなかった。また、エコ配置/エコラベル表示が、買い物に対して健康スコアに影響を与える、という有意性も出なかった。
配置/ラベルの容認性
配置を工夫すること、ラベル表示を行うことについては図の通り、多数が肯定的な回答をしている。
(英国では)健康ラベル表示については既に広く導入されているため、現在ラベル表示をどれくらい使用しているかを質問し、結果、「常に」/「よく」が41.4%、「時々」が34.3%、「殆ど使用しない」/全く使用しない」が24.4%だった。

まとめ
この研究の結果、実験用に用意されたオンラインスーパーにて、商品の配置とラベル表示の効果検証を行い、両者が併用可能であることを示すことができた、としている。
結果として、商品配置の方法によって健康的/環境に良い持続可能な商品が選択される可能性は改善された。
ただし、商品配置に健康/エコラベル表示を足すことによるはっきりとした効果は得られなかった。
原文タイトル:Combining positioning and labelling interventions for healthier and more environmentally sustainable products: A randomised controlled trial in an online experimental supermarket
論文著者:Cinja Jostock, Alice O'Hagan, Rachel Pechey
公開日: 2025/11/06

