肉がもつアニマルウェルフェア、環境、健康面での帰結を毎日リマインドすることによる肉消費への主要な影響と穏当な影響

Daily reminders about the animal-welfare, environmental and health consequences of meat and their main and moderated effects on meat consumption

Ida Strande Ottersen, Nora C.G. Benningstad, Jonas R. Kunst

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666784322000225?via%3Dihub

論文概要

 

実験のデザイン

  • 被験者はノルウェーの学生(70%が女性)
  • 被験者は7日間、毎朝、朝食の前に肉消費がもつ帰結について書かれたテキストメッセージを受け取り、毎晩、最後の食事の後に、肉消費に関するアンケートに回答する。
  • 被験者は毎朝、肉のアニマルウェルフェア上の帰結、健康上の帰結、環境面での帰結のいずれかに関する情報が提供される。どの被験者がそのうちどの情報を受け取るのかはランダムに決められ、日ごとに変わる。
  • 7日間の通知期間終了1週間後と3週間後にも追跡調査が行われた。
  • テキストメッセージの内容はこちらから閲覧可能

結果

  • 7日間の介入期間、予想に反して肉消費は増えた。
  • 肉の種類別に分ければ、実験の前後で鶏肉の消費は相当程度減り、赤肉の消費が増えている。
  • ただし、どちらの種類の肉の消費も3週間後には元に戻っている。
  • アニマルウェルフェア、環境、健康のどの話題を強調しても、1週間の介入期間の間で被験者には影響がなかったことになる。
  • ただ一点のみ、穏当な影響があった。すなわち、嫌悪感を抱く傾向の強い人は、環境や健康ではなくアニマルウェルフェアに関する情報を受け取ったときにより肉の消費が減る。

考察

  • 先行研究では似たような介入により肉の消費は減っていた。今回の実験で異なる結果が出た原因として以下が考えられる:
    1. 先行研究では健康や環境に関連する内容しか含んでいない。
    2. 先行研究は日ごとの通知を2週間送っているが、この研究では1週間しか通知を送っていない。食生活を変えるには1週間は短すぎたのかもしれない。
    3. 先行研究で送信されたメッセージには、目標をリマインドしたり、自己観察を促す文が含まれていたり、肉消費に対する後悔を引き起こすような感情に訴える内容が含まれていた。こうした追加のインストラクションなしに、肉消費がもつ帰結だけを消費者に伝えるのは不充分なのかもしれない。食事の選択は習慣的な行動で、大部分が自動的な過程によって導かれているという研究もある(Karevold et al., 2017)。それゆえ、情報を提供するだけでは、個々人に習慣を変えるには弱く、個人的なつながり(personal involvement)や、感情の誘発などの追加の要素が必要になるのかもしれない。
  • 嫌悪感を抱きやすい人の間では赤肉の消費が減り、鶏肉の消費は減らなかった。赤肉の方が、動物の死体との連想が働きやすく、嫌悪感を引き起こしやすいからかもしれないし、人々は鳥よりも哺乳類をより配慮するからかもしれない。
  • 被験者がノルウェーの学生であり、既に肉消費の帰結に関する情報に多く触れたことがあるため、今回の実験であまり影響がでなかったのかもしれない。
  • ノルウェーでは、家庭に農家がいたり、実家が農家であったりすることが多いため、アメリカなどの国と比べると、ノルウェー人たちは肉の消費による帰結を知っても、あまり問題があると思わなかったかもしれない。

※原論文の著作権情報:For all open access content, the Creative Commons licensing terms apply.

 

別のFACTを探す