論文概要
この論文で著者は、動物学の研究者は人間と動物との絆を他の社会正義の問題と結びつけて考えるべきとしており、またその理由を説明している。
動物との関わり方は、アニマルウェルフェアに大きな影響を与え、またそれは、性別、人種、障害、セクシュアリティ、階級といった人間の要素に大きく影響を受けている。
この論文では、Companions and Animals for Reform and Equity(CARE)の研究者たちが、人種、民族、階級、能力、性別などの要素が、人間と動物の関係にどのような影響を与えるかを説明している。彼らは、社会から疎外されている人々のニーズをよりよく理解することは、アニマルウェルフェアの問題に対して、より効果的な解決策を作る上で役立つと主張している。彼らの洞察は研究者向けであるが、動物擁護者もこの視点から学べることが多くある。
障害者の正義
研究者たちは、身体的・知的障害者の生活を考慮することが真のアクセシビリティであると主張している。これには、介助動物を飼っている人々も含まれる。例えば、障害者コミュニティが望ましい政策や社会的受容を擁護しているにもかかわらず、感情を持つ介助動物が「正当なもの」と見なされるために現在も奮闘中であることを強調している。著者は、介助動物の保護者は、彼らの幸福度とアニマルウェルフェアに影響を与える政策の決定に積極的に関与すべきだと主張している。
環境正義
著者はさらに、環境正義が人種や階級の不公平など、他の問題とどのように関わっているのかについて述べている。 黒人、先住民、その他の有色人種(BIPOC)は、環境的に有毒な場所(埋立地や化学工場など)の近くに住む可能性が高く、大きな健康問題に繋がっている。彼らの介助動物もまた、汚染の被害を受けるだろう。もう一つの例として、経済的に恵まれない人々が、手頃な価格の新鮮な食料を手に入れることができない地域に住んでいる、フードデザート(食の砂漠)がある。十分な買い物の選択肢がなければ、介助動物のための食料を手に入れるのにも苦労するだろう。
著者は、このトピックに関心のある研究者は、批判的環境正義という研究分野を通じて、環境正義の研究を改善できると考えている。分野横断的な研究によって、人間と動物双方に関わる環境不正義のパターンを特定し、さらに、BIPOCのコミュニティがよりよく環境正義の推進に関与できる方法について得ることができる。
ジェンダーとセクシュアリティの正義
著者らは、今後の人間と動物の絆の研究において、LGBTQ+のコミュニティを調査する必要があると考えている。彼らと彼らの飼う動物とが受ける問題は研究で既に特定されている為である。例えば、社会的烙印を経験しているトランスジェンダー、ノンバイナリー、高齢の性的マイノリティは、介助動物の受け入れに重きを置いていることが既に分かっている。
また、セクシュアル・マイノリティやジェンダー・マイノリティは、一般的な人々と比較して、後年、身体的健康が損なわれたり、うつ病を発症したりするリスクが高いという研究結果もある。 保護者の健康状態が悪化すると、その介助動物も影響を受けるかもしれない。人間と動物の絆の研究は、動物とLGBTQ+の動物保護者双方の暮らしを向上させる可能性がある。
人種的正義
人種的不公正に取り組むということは、さまざまな形態の人種差別と、人種的に疎外された人々の経験を理解するということである。また、人種的トラウマが、攻撃性の増加からアルコールや薬物の乱用に至るまで、個人やそのコミュニティにどのような悪影響を及ぼすかを理解する必要もある。
CAREの研究から、アニマルウェルフェアの分野において、人種的に多様な動物保護者(特に貧しい黒人の保護者)に対して否定的な態度が存在していることがわかった。この研究はまた、動物福祉は多くが白人によって運営されており、現在のアニマルウェルフェアのサービスは、BIPOCコミュニティを包括しておらず、歓迎していない可能性があることを示していることを発見した(編集部注:Encompass Movementは、畜産動物の擁護における人種的公平性に関する報告書も発表している。)
著者たちは、現在の白人中心のアニマルウェルフェアの視点を捨てるよう求めている。動物擁護団体はBIPOC間の特有性を認識し、その人々特有の民族的・文化的背景を尊重する方法で人間と動物を支援する必要がある。
ヒトと動物の研究の改善
著者らは研究者に対し、参加者の多様性を高め、人種的マイノリティが「白人」「非白人」など、ひとくくりにされないようにすることを勧めている。参加型アクション・リサーチのような方法論は、社会から疎外されたコミュニティを被験者ではなく参加者とみなし、彼らに影響を与える研究への直接参加を促すものであり、社会正義の視点をサポートできるかもしれない。
アニマルウェルフェアの問題は、人種、性別、セクシュアリティ、能力、その他の社会正義の問題によって影響を受ける可能性があるため、動物擁護団体は、疎外されたコミュニティの人々に積極的に参加してもらう必要がある。人間と動物双方の暮らしを良くしていくことが、我々のゴールとなるべきである。
※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。
Rethinking Animal Welfare From A Social Justice Lens – Faunalytics
原文タイトル:Decolonizing animal welfare through a social justice framework
論文著者:Jenkins, J. L., & Rudd, M. L.
公開日: 2022/01/27

