家畜に穀物を与えることで人間の食べ物を無駄にしている

論文概要

 

人間が食べられる穀物を家畜に与えることは、20億人分の食料を無駄にすることになる。この報告書では、「飼料ではなく食料」への転換がなぜ不可欠なのかを説明する。

工業的な畜産は、比較的狭い土地で多数の動物を飼育できる効率性の高さからしばしば称賛される。しかし、これは動物の餌となる穀物や大豆を生産するために膨大な土地面積が必要であることを隠す欺瞞に過ぎない。例えば、工業的な豚や鶏の飼育に使われる土地の99%は実際には飼料の栽培に充てられており、動物自体が占める面積はわずか1%に過ぎない。

非営利団体「コンパッション・イン・ワールド・ファーミング」によるこの報告書は、人間が食べる作物を家畜に与えることは、錬金術の逆バージョンであると主張している。家畜はエネルギーとタンパク質の変換効率が悪いため、畜産は世界最大の食品廃棄行為となっている。報告書は、飼料生産が世界の食料安全保障をいかに損ない、環境悪化の一因となり、世界で最も脆弱な立場にある人々の食料価格を高騰させているかを詳細に分析している。

研究者らは、国連食糧農業機関(FAO)および様々な政府機関から得られた穀物使用データを分析し、代表的な国や地域(英国、米国、EU、ブラジル、中国、南アフリカなど)における飼料廃棄量を算出した。確立された換算率を用いて、穀物を様々な動物に与えた際に失われるカロリーとタンパク質の量を算出した。そして、この飼料廃棄量を、家庭や小売店で廃棄されるような従来の食品廃棄物と比較した。さらに、統計モデルを用いて2040年までの穀物需要予測も行った。

驚くべき非効率性

世界中で、年間7億6600万トンの穀物が、家畜の豚、鶏、牛の飼料として無駄にされている。この数字は、世界の他の形態の食品廃棄物をはるかに上回る。家庭での廃棄量は年間6億3100万トン、外食産業での廃棄量は2億9000万トン、小売業での廃棄量は1億3100万トンと推定されている。

1年あたりの、与えた穀物飼料に対して動物に変換することで発生するフードロス

動物は、人間が食べられる穀物を肉や牛乳に変換する効率が非常に低い。研究によると、動物に与える、人間が食べられる穀物100カロリーのうち、人間に肉として取り込まれるのはわずか3~25カロリー程度である。タンパク質の変換効率も同様に低く、動物に与える、人間が食べられる穀物に含まれるタンパク質100グラムのうち、人間に取り込まれるのはわずか5~40グラム程度である。微量栄養素も無駄になり、動物に与えた鉄のわずか7%、亜鉛の21%しか最終的に人間に届かない。

報告書によると、穀物を家畜飼料として使用するのをやめれば、世界中で今よりも年間20億人もの人々に食料を供給できると試算されている。穀物と大豆を飼料として使用するのをやめれば、世界中で約1億7500万ヘクタールの耕作地が解放されることになる。これはインドネシアの国土面積にほぼ匹敵する。この土地は、果物、野菜、ナッツ、豆類など、人間が直接消費する様々な作物の栽培に利用できる。

環境被害

飼料生産が環境に及ぼす影響は甚大である。鶏や豚の生産における温室効果ガス排出は、飼料生産が主な要因となっている。実際、飼料生産とそれに伴う土地利用の変化は、工業的な鶏の飼育における排出量の67%から91%、工業的な豚の飼育における排出量の41%から68%を占めている。

集約的な飼料生産は合成肥料に依存しており、それが土壌の酸性化や水質・大気汚染を引き起こしている。さらに、有害性の高い農薬の約44%は、主に家畜飼料用の大豆とトウモロコシに使用されている。大豆生産は、熱帯林破壊の2番目に大きな要因となっている。過去30年間で、ブラジルの森林2000万ヘクタール以上が大豆栽培の拡大によって失われた。
世界の飼料生産における現在の傾向が続けば、これらの影響はさらに深刻化するだろう。報告書は、「現状維持」シナリオの下では、動物に与えられる穀物の総量は2022年の10億1000万トンから2040年には18億2000万トンに増加し、81.5%の増加になると推定している。

食料安全保障を脅かす

食肉需要の急増に牽引された穀物産業の需要は、主要作物の市場価格を押し上げる圧力となっている。これにより、グローバル・サウスの脆弱な人々にとって食料の入手がますます困難になっている。

飼料として穀物をより多く使用すると、人間が直接消費できる供給量が減少するため、食料安全保障が脅かされる。報告書は、家畜が食料安全保障に効率的に貢献するのは、人間が消費できない原料を人間が食べられる食品に変換する場合のみであると指摘している。こうした原料には、牧草、副産物(ビール粕や柑橘類の果肉など)、作物残渣、そして適切に処理された避けられない食品廃棄物などが含まれる。このシステムに移行するには、世界、主に高所得国と中所得国の動物由来の食料生産と消費を約50%削減する必要がある。

研究の限界

報告書は、飼料として使用されている穀物のすべてが現在、人間の食用に適しているわけではないことを認めている。また、穀物を動物の飼料として使わなくなった場合、その土地の約50%は、畜産物の減少を補うために、人間が直接消費する代替作物を栽培するために必要となるだろう。そして、将来の穀物使用量予測の中には、ヨーロッパやオセアニアなど、データの確実性が低い地域が含まれている。

主な提言

動物擁護活動家にとって、そのメッセージは明確だ。人間が食用とする穀物を飼料として使用することをやめることは、動物、人間、そして地球にとって不可欠である。

  • 「機会コストが低い」飼料への転換:家畜には、牧草、作物残渣、適切に処理された食品廃棄物など、人間が食べられないものだけを与えるべきである。
  • 政策変更の支援:擁護者は、「食料優先」の土地政策、飼料作物への補助金の廃止、金融機関による工業型畜産への投資撤退などを働きかけることができる。
  • 植物性食品を豊富に含むフレキシタリアン食を推進する:各国政府は、動物性食品の消費量が多い層における消費量を削減し、植物性食品中心の食生活へと移行するための明確な目標を設定すべきである。
  • 国民の意識を高める:擁護者たちは、さまざまな畜産方法や消費レベルが環境、食料安全保障、人間の健康、動物福祉に及ぼす影響について、引き続き一般の人々に啓発活動を行うことができる。

「飼料ではなく食料」という考え方に移行することで、地球の限界内で増加する世界人口を養うことができる。

※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。

 

原文タイトル:Food not feed: How to stop the world’s biggest form of food waste.

論文著者:Compassion in World Farming.

公開日: 2025/10/08 

論文URL:https://www.ciwf.org/media/3bcflr5r/ciwfgb_011025_cam_endit_foodnotfeed-report_en_web_published.pdf

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