飲食サービス業界での肉→菜食への置き換えの研究についての批判的考察

論文概要

 

(要約)
肉の消費量を削減するにあたって、これまでの研究では、消費者の選択に影響を与える介入策に関するものが多く、しかし、その方法では全体的な削減量の効果としては僅かだった。
この論文では、近年の研究を取り上げ考察し、結果、提供する料理のデフォルトを変更することが最も有望な戦略としている。

消費者の選択に影響を与える形の介入では、多くの場合、既に動物性食品の消費削減に取り組んでいる層が強く影響を受け、肉を多く食べる層への影響、長期的な効果を生むことについては失敗しているとして、この論文では、気候危機の緊急性のもとにおいて肉の消費量を劇的に変えるためにも、持続可能な食生活への転換は消費者の意志に頼るべきではなく、政策や制度的な措置によって、植物性食品の入手のし易さ、価格、目につき易さを変えていくべきだとしている。

菜食への移行は、消費者の嗜好や受け入れにおいて困難に直面しており、この問題を理解する一つの方法として、犯罪、貧困、依存症、ホームレス、肥満といった社会問題に目を向けることを挙げている。
これらの問題は、かつては個人の性格、意志の弱さといった個人の問題と考えられていたが、今では、社会構造の変革による解決が必要なものとして論じられている。

分析結果:

論文内では、近年の、介入によって肉の消費量を減らす試みについて書かれた多くの研究について取り上げ、その効果を分析している。その結果が図にまとめられており、「デフォルトのメニューを変える」方法が最も効果的だ、としている。

挙げられている「デフォルトのメニューを変える」方法は、例えば

  • デンマークでの会議参加者に対し、菜食メニューをデフォルトにし、肉のメニューを注文する場合はメール登録が必要、としたところ、肉のメニューをデフォルトにした場合と比べて、菜食メニューの選択率が7%->87%の結果となった。
  • オランダでの小規模な実験では、豆バーガーをデフォルトに設定したところ、選択率は8%->80%となった。
  • 菜食メニューを「本日の料理」、肉料理を「代替メニュー」と呼ぶことで、菜食メニューの選択率は35%->60%に上昇

といった結果になっている。

その他の方法についての研究例も論文内で分析しており、例えば以下のような結果となっている。

  • 米国にて環境ラベルを付けると、男性の菜食メニュー選択率は9%->7%、女性の菜食メニュー選択率は0%->12%に変化
  • スウェーデンの大学食堂で環境ラベルを付けると、菜食メニュー選択率が14.6%->15.4%
  • オランダの動物園で「アニマルウェルフェアに配慮してますか?」と書かれたポスターを貼ったところ、ベジタリアンバーガーの売り上げ割合が4.7%->9.9%
  • 米国のカフェテリアでアニマルウェルフェアのパンフレットを配ったところ、男性の魚・鶏肉料理の選択率が2.4%、女性の牛肉選択率が1.6%減少。しかし2か月後元に戻った。
  • 米国で菜食料理を「シェフのおすすめ」としたところ、選択率が13%->15%に変化
  • ヨーロッパの4つの学校で菜食料理を「シェフのおすすめ」にしたところ、15%->19%に変化
  • フランスで、菜食料理を「シェフのおすすめ」化、メニューの表示順序を変更、異なるフォントサイズを使用、肉料理を「代替料理」化したところ、菜食料理の選択率は35%->60%に変化
  • オンライン上で一つのメニューを選ばないといけない状況で、植物性代替肉(PBA)の製造方法、持続可能性の情報を与えたところ、牛ひき肉の売上割合が4%減少
  • 社会面、健康面での情報を与えたところ、情報が無かった場合は49.1%だったベジタリアンバーガーをミートバーガーよりも選んだ割合が、68.5%, 69.8%に増加
  • 英国の大学食堂での実験的研究では、菜食メニューの割合を25%->50%に増やすことで、菜食メニューの売上は19%->27%に上昇すると推定
  • オランダでの実験で、提供する割合を調整することで、消費者の満足度を下げることなく、肉の量を最大30%削減し、野菜を2倍にしている
  • 植物性食品(PBA)のバスケットを4週間参加者の家に届けたところ、肉の摂取量が(届けない比較群と比べて)約50%減少
  • 果物と野菜を組み合わせると、組み合わせの仕方を工夫することで、単に提供するだけで消費量が増加するとの研究結果
  • 英国の大学食堂において、カウンターでの肉料理と菜食料理との配置や順序を変えることで、後者の選択率が4~6%上昇

動物性食品から植物性食品への移行を促進する戦略としての課税についての研究の例も幾つか挙げられているが、あまり良い結果を出せていない、としている。低所得層は所得に占める食費の割合自体が大きいので、肉に課税する場合は、高所得層との不平等を補う、別の補償措置も必要になってくる。

方法の多くは、若い女性など、もともと肉を減らすことに関心がある消費者を対象にしてしまう傾向があり、効果が小さく、数週間でもとに戻ってしまう結果となっているので、論文では、肉への執着が強く、変化に消極的な人々にアプローチすべきだと述べられている。

案として、菜食料理をデフォルトにし、肉入りの料理の注文は追加の手続きが必要になる、その肉入り料理についても、植物性代替肉を50%混ぜた料理にしておく、といったことで、レストランで提供される動物性食品の割合を劇的に減らすことができる、との例を挙げている。

こういった方法を取っているケースも既に一部あるので、研究者はこのような戦略を研究し、公的な規制、政策、飲食サービス業界を導いていくべきである。

他、いくつかこの問題に対応するための研究テーマが挙げられており、例えば、

  • 職場、病院、学校、飛行機、学校などにおいて、公的機関や民間企業が、植物性の料理を無料、あるいは間接的な支払いで提供する、といった方法
  • ベジタリアンの食事を「かっこいい」ように見せたり、個人のアイデンティティに結び付けるような方法

などについて、より研究していくべき、としている。

 

原文タイトル:How can consumer science help the foodservice industry replace meat? A critical review

論文著者:Iuri Baptista, Emma Garnett, Åsa Öström

公開日: 2025/01/11 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2025.107861

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