論文概要
人工知能は文化的偏見を強める可能性がある。この記事では、人工知能がどのように種差別を助長し、動物への抑圧に繋がる可能性があるか、考察している。
人工知能(AI)は人間の文化にますます大きな影響を及ぼしている。 その影響は特にインターネット上で見ることができる。AIは検索結果やソーシャルメディアのフィードに影響を与える。AIは私たちのオンライン上の行動や言語をもとに、私たちが見たいと思うものを予測することができる。
「AI倫理」の研究者たちは、人間に関する情報のインプットを通じて、AIがどのように非倫理的なバイアスを学習するかを調べている。ここで、AIはシステムに投入された情報は何でも学習するとしている。従って、もし人々が使う言葉や行動が人種差別的であったり性差別的であった場合に、AIはそれが許容されるものであることを学習し、自ら使うことが役に立つとさえ考えるようになるだろう。
これまで、倫理的な研究は人間の扱いに影響を与える可能性のあるバイアスに焦点を当てて行われてきた。この論文で研究者たちは、AIが学習する、動物がその種が何かによって受ける扱いにまつわる「種差別」についても考えるべきだと主張している。私たちが犬を愛する友人や家族の一員と考え、豚を食用として屠殺される商品と考えているのは、人間の種差別的な態度だ。
AIの一般的な応用例のひとつに画像認識がある。画像に繰り返し触れることで、AIはさまざまな写真がどのようにそれぞれ異なるカテゴリーに分類されるかを学習する。これは、「犬」や「猫」の写真を要求に応じて表示するのに役立つ。 問題は、認識アルゴリズムは与えられたカテゴリーと、AIが触れるデータの種類に基づいて動作することだ。
研究者たちは、画像データセットでは、ほとんどの鶏が狭い工場的畜産のもとで飼育されているにもかかわらず、しばしば「鶏」が野原を歩き回っている写真が返ってくるとしている。研究者たちは、放し飼いの鶏、工場的畜産で飼育される鶏、放し飼いの豚、工場的畜産で飼育される豚というカテゴリーで新しいデータセットを作成した。すると案の定、画像分類モデルは、放し飼いの動物よりも工場的畜産で飼育されている動物の写真を識別するのが苦手だった。これはおそらく、畜産農場の透明性の欠如の結果であり、AIの学習に工場的畜産で飼育された素材が少ないことを意味している。これは人々が目にする写真に影響を与え、畜産動物が耐えている苦しみを無視しやすくなるかもしれない。
AIは言語モデルにも適用され、ソーシャルメディアやニュース、その他のウェブサイトからのデータを使って、単語間の関連や、文中でどの単語が他の単語の後に続く可能性が高いかを学習する。その結果、データには種差別を含むあらゆる種類の人間のバイアスが含まれている可能性が高い。
研究者たちは、”牛 “や “豚 “といった畜産動物の単語と、”犬 “や “猫 “といったペットとされる動物の単語を取り上げた。 AIシステムがこれらの単語を「かわいい/醜い」や「好き/嫌い」のような肯定的・否定的な単語のペアとどのように関連付けるかを調べた。予想通り、畜産動物のほとんどは否定的な単語と関連付けられ、ペットとされる動物は肯定的な単語と関連付けられた。他の方法を使ったところ、これらのモデルもまた、畜産動物に精神的能力の低さを示唆する形容詞を割り当てていることがわかった。 また別のモデルでは、畜産動物の価値は彼らから得る生産物のみにあることを示唆する文章が生成された。言語モデルにおける種差別は、動物に関するステレオタイプを強めたり、誤った情報を広めたりする形で、私たちがオンラインで目にする文章に影響を与える可能性がある。
最後に、AIはしばしばレコメンダー・システムに使われる。消費者の行動をもとに、彼らが得る情報をその人向けにアレンジするオンラインツールのことである。AIは、その人が残したコメントや検索履歴から学習するので、その人が自分の既存の見解や態度を支持する資料を繰り返し見るというフィードバックのループを引き起こす可能性がある。
他の形態のAIと同様、これは種差別を助長するかもしれない。 例えば、検索エンジンは、「アニマル・チャリティー」と検索した場合に、畜産動物のためのチャリティーではなく、ペットとされる動物を支援するチャリティーのほうに誘導する傾向が出てくるかもしれない。ソーシャルメディア上で表示されるパーソナライズされた広告も、ファッションであれ食品であれ、動物製品の購入を助長するかもしれない。残念ながら、これらのアルゴリズムは企業秘密として保護されるので、それらがどのように機能しているかを正確に調べることは難しい。
AIのバイアスを減らす方法は存在しており、例えば、言語モデルにおけるジェンダーのバイアスを減らしたり、画像認識が人種差別的な分類を助長しないようにするための措置が取られている。しかし、種差別については、こうした措置は取られていない。
もちろん、この記事は、畜産動物は道徳的配慮に値するという信念に依って書かれている。多くの動物擁護者や研究者は、ブタ、ニワトリ、ウシ、あるいは魚も複雑な能力を持ち合わせており、犬や人間と同じように苦しみを経験するだろうという証拠に基づいて、そう確信している。そうであるならば、種族だけで彼らに対する暴力を支持することは許されるべきではない。
しかし、このことはAI倫理においても障害となる可能性が高い。多くの人々は、種差別を意識していないか、争う価値のあるものだと信じていない。AI倫理に携わる人々は、種差別を深刻に受け止めることはないだろう。動物擁護者たちは、特にAIの偏見に関する会話において、種差別への取り組みの重要性を強調し続けることで、役割を果たすことができる。そうすることで、AIの革命がこの見過ごされてきた抑圧のシステムを助長させない、道徳的重要性を示すことができるだろう。
※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。
原文タイトル:Speciesist bias in AI: how AI applications perpetuate discrimination and unfair outcomes against animals
論文著者:Hagendorff, T., Bossert, L.N., Tse, Y.F., & Singer, P.
公開日: 2022/08/29

