ヴィーガンドキュメンタリーの現実世界への影響

論文概要

 

What The Health』、『Forks Over Knives』、『Cowspiracy』といった映画は、ヴィーガニズムを多くの人々に広めたが、これらのドキュメンタリーは実際に人々の食生活を変えているのだろうか?

過去20年間、多くの映画、書籍、YouTube動画がプラントベースな食事を推進してきた。『What The Health』、『You Are What You Eat』、『The Game Changers』といったドキュメンタリーは、数百万人の視聴者に届き、その中でも特に人気がある。しかし、人々はこれらの映画を観た後、本当にプラントベース食に切り替えているのだろうか? 
それを明らかにするため、研究者たちはヴィーガン映画の流行の後に、プラントベース食に関するGoogle検索や食品購入が増加していたのか、調査を行った。この研究では、米国および世界的なトレンドを調査することで、ドキュメンタリーが現実世界の変化につながるのかを明らかにしている。

健康をテーマにしたドキュメンタリーが際立っている

研究者たちはまず、過去20年間で最も人気のあるヴィーガニズム関連のメディアを特定することから始めた。記事、書籍、映画、ポッドキャスト、YouTube動画の長いリストの中から、最も人気のあるタイトルを選定した。

Google検索のボリュームに基づくと、最も人気があったのは『Okja(2017)』で、次いで『What The Health(2017)』、『The Game Changers(2018)』、『You Are What Eat(2024)』、『Forks Over Knives(2011)』、『Cowspiracy(2015)』の順でした。これら6つの映画について更に分析を行った。なお、書籍『Eating Animals』や映画『Diminion』など他のメディアについては、研究者が設定した人気閾値を下回ったため、調査から除外している。

興味深いことに、最も人気のある6本の映画のうち4本(67%)はプラントベースの健康上の利点に焦点を当てており、これは検討された全メディアの種類内の36%と比較し、高い割合である。このことは、倫理を中心とした主張よりも、健康に基づく主張の方がより幅広い層に届く傾向があることを示唆している。

最も人気のある映画6本が、プラントベース食への大衆の関心に影響を与えたかどうかを調査するため、研究者らは、映画に関するGoogle検索トレンドと、「ヴィーガン」「ベジタリアン」「植物由来(plant based)」を含む用語の検索トレンドを比較した。
「近くの植物由来のレストラン」や「簡単なベジタリアンレシピ」といった行動関連の検索は、別個に分類された。次に、映画の人気の後に食品需要の変化が続いたのかを確認するため、肉、乳製品、および植物由来代替食品の米国における販売データを調査した。

人々は変化の意思を示している

調査された6つの映画の中で、『What The Health』、『The Game Changers』、『You Are What You Eat』の3本が特に際立っており、これらの健康志向ドキュメンタリーが流行すると、プラントベース食に関するGoogle検索がはっきりと増加する。米国では、各映画の人気が1単位上昇するごとに、翌週の「plant based」検索がそれぞれ24%、9%、8%増加した。同様の傾向は世界中で見られた(20%、18%、6%)。

人々は単に植物由来の食事に関する情報を検索していただけでなく、実際にそれを実践する方法も能動的に検索しており、結果、米国では関連検索が43%、11%、11%増加し、世界全体では31%、17%、7%増加していた。この結果から、これら3つのドキュメンタリーは人々の食事改善の意欲を促進したと考えられる。他の3つの作品はこれより効果が弱い結果となった。

こうした行動変容の意思から、食習慣はシフトされることが予想される。しかし、全国の販売データを分析したところ、映像作品の人気の高まりが、動物性食品や植物性食品の需要に明確な影響を与えていることは確認できなかった。仮に影響があったとしても、研究内では捉えきれないほど小さく、長期的なものかもしれない。このパターンは過去の先行研究とも一致している。つまり、ドキュメンタリーは人々に行動を変えるインスピレーションを与えることが多いが、それが直接的な行動変容には結びついていないということである。価格や味、植物性食品の入手し易さといった壁が、人々の行動を妨げている可能性がある。

意思から行動へ

意思から永続的な変化へと変える方法については更なる研究が待たれるが、動物擁護活動家は、今回の研究から有益な教訓を得ることができる。まず、健康に関するドキュメンタリーは、動物の権利に焦点を当てたものよりも、一般的に、幅広い観客に届く。従って、多くの人に届けることが目標である場合、健康面からのアプローチを含めることは良いアイディアかもしれない。しかし、この知見には慎重になることも重要であり、この研究で詳細に調査された映画は僅か6本なので、健康面と倫理面どちらの主張が人々の意思を変えるのにより効果的であるかを示しているわけではない。

最も重要なのは、この研究によって、一部のヴィーガン・ドキュメンタリーが公衆の関心に目に見える影響を与え得ることが示された点である。このような作品が人気を集めると、プラントベース食を食べたいと考える人が増える。しかし、その『意思』を『行動』へと移す段階には、依然として課題が残っている。動物擁護活動家たちは、継続的な教育や啓発活動と並行して、値段が手頃で美味しく、かつ入手のしやすいプラントベース食へのアクセス性を良くすることで、この一歩を後押しできる。

※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。

 

原文タイトル:Documentary films can increase public interest in plant-based diets in the USA

論文著者:Thomas, A. T., Hope, J. E., & Mathur, M. B.

公開日: 2025/09/19 

論文URL:https://doi.org/10.1038/s43016-025-01227-7

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