論文概要
毎年15億頭以上の家畜が生きたまま取引されている。この論文では、その取引ルートを明らかにし、動物、人間、そして地球環境に対する主要なリスクを明らかにする。
食肉、牛乳、卵に対する世界的な需要は増加の一途をたどっており、それに伴い国境を越えて輸送される動物の数も増加している。動物性製品の輸出入については多くの人が認識しているが、生きた動物の取引の規模と複雑さを理解している人ははるかに少ない。この研究は、2005年から2021年にかけての12種の家畜の国際的な移動を分析した、これまでで最も詳細な分析の一つとなっている。
この調査結果は衝撃的だ。毎年15億頭以上の家畜が生きたまま取引されており、その取引量は増加の一途を辿っている。この傾向は、動物福祉、疾病リスク、環境の持続可能性といった点で重大な懸念を引き起こしており、それらはすべて動物擁護活動家にとって直接的な問題である。
研究デザイン
研究者らは、国連食糧農業機関(FAO)の統計データベースであるFAOSTATのグローバルデータを分析した。対象としたのは、鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥、豚、牛、羊、ヤギ、ラクダ、水牛、馬、ウサギ/ノウサギを含む12種の家畜である。2005年から2021年までの17年間における各国間の輸出入量を調査し、種別、大陸別、国別の傾向を明らかにした。
この研究では、各国が双方向貿易(同じ種の輸入と輸出の両方)に関与する頻度や、貿易のうち同一地域内ではなく大陸間で行われる割合も測定した。
主な調査結果
研究者たちはいくつかの注目すべき傾向を発見した。
- 最も取引量の多い種は鶏で、年間平均13億羽以上が国境を越えて移動しており、次いで七面鳥(6800万羽以上)、豚(3500万羽以上)、アヒル(2400万羽以上)となっている。
- 水牛の取引は年間26%以上の増加率で最も急速に増え、次いでガチョウ(16%)、ニワトリ(7%)、アヒル(6.5%)が続いた。
- ヨーロッパは全体として最大のプレーヤーであり、牛、鶏、アヒル、豚、ウサギを大量に輸入・輸出していた。ドイツ、オランダ、ポーランドなどの国々は、複数の種類の家畜の主要貿易国であった。
- 牛、ヤギ、羊、ラクダの輸入はアジアが圧倒的に多く、殆どが、国内需要の高まりによる輸入である。
- 大陸間貿易は広く行われている。 2021年には、12種のうち8種で、貿易量の10%以上が大陸間で行われていた。牛と馬は、大陸間移動の割合が最も高かった。
- 双方向の貿易は一般的である。例えば、イタリアとオランダは2021年に11種の動物について双方向の貿易を行っていた。
動物取引の傾向


動物福祉、健康、および環境リスク
生きた動物の輸送、特に長距離輸送は、動物福祉に深刻な脅威をもたらす。この研究では、輸送中の病気、跛行、温度ストレス、窒息、不適切な取り扱いなど、取引される動物にとって重大な福祉上の懸念事項を明らかにしている。
こうしたストレス要因は、疾病の蔓延リスクも高める。2025年にドイツで発生した水牛の口蹄疫の流行は、生体取引を通じた疾病伝播の危険性を浮き彫りにした。同様に、Q熱のような報告が少ない疾病も、動物が国際的に移動する際、気づかれずに国境を越える可能性がある。
環境への影響も大きな懸念事項である。畜産業は温室効果ガス排出の主要因であり、動物を海上輸送で長距離輸送する場合、輸送に伴う排出ガスが気候変動への負荷をさらに増大させる。
制限事項
この研究は、様々な国内外の情報源から収集されたFAOSTATデータに基づいており、輸出入記録の間にはギャップや不一致が見られる。多くの国では、動物の頭数ではなく重量(トン)で貿易量を報告しており、研究者らはこれらの数値を変換するのではなく除外した。これは、取引される動物の重量が大きく変動する可能性があるためである。つまり、この研究の結果は過小評価されている可能性が高い。また、馬は食用ではなくレクリエーション目的で取引された可能性もあるが、データセットには含まれている。
動物擁護者との関係
この研究は、生きた動物の取引がニッチな問題ではなく、数十億もの生き物が関わる巨大で拡大し続けるグローバルシステムであることを示している。動物の苦しみ、パンデミックのリスク、気候変動を懸念する活動家たちにとって、改革を求める声を裏付ける新たなデータを手に入れたことになる。
生体輸出禁止、動物福祉基準の向上、地域食料システムの回復力強化を目指すキャンペーンは、いずれもこの研究から恩恵を受けることができる。また、この研究結果は、世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫協定(SPA)および関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第20条b項に基づく、より強力な規制を求める根拠を強化する上でも役立つ。これらの条項はいずれも、確固たる証拠があれば、各国が健康と安全上の理由から貿易を制限することを認めている。
最終的に、長距離の生体輸送への依存を減らし、植物由来の食料システムを促進することは、より倫理的で持続可能な未来に向けた不可欠なステップとなる。
※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。
原文タイトル:From barnyard to boarding pass: Exploring livestock’s world tour
論文著者:Warne, R. K., Cleaveland, S., & Chaber, A. L.
公開日: 2025/03/30

