ファームアニマルウェルフェア・インパクト評価 2026
Farm Animal Welfare Impact & Sustainability Evaluation

FARMWISE Impact 2026

FARMWISE Impact 2026(ファームワイズインパクト2026)は、日本の主要企業を対象に、ファームアニマルウェルフェアに関する取り組みが実際の福祉改善につながる「影響力(インパクト)」をどの程度備えているかを評価する、NGO主導の企業評価です。 本評価における「インパクト」とは、理念や宣言の有無にとどまらず、方針の具体性、実施状況、サプライチェーンへの適用範囲、リスク管理、情報公開の水準などを通じて、飼育環境や管理の改善に結びつく仕組みが構築されているかを指します。 また、アニマルウェルフェアへの対応は、社会の持続可能性とも接続しており、本評価は、その社会的影響を明らかにする枠組みでもあります。
FARMWISE Impact 2026は、単純な順位付けを目的とするものではありません。国際的に求められるアニマルウェルフェア水準と比較しながら、日本企業の到達度、課題、構造的ギャップを可視化することを目的としています。

2026/2/25

FARMWISE Impact 2026の傾向と分析

アニマルウェルフェアをビジネス状の課題と捉えているか

評価対象企業のうち、アニマルウェルフェアに関する全体方針を明示的に公表している企業は限定的で7割近くの企業が、アニマルウェルフェアをビジネス上の課題として認識していない、または重視していないと考えられます。けれどもこの7割に含まれる企業の中には個別の課題には取り組む企業もあり、また社内での議論や勉強が進んでいる企業も含まれている点は留意する必要があります。

重要課題にアニマルウェルフェアを入れている企業は32社で29.9%でした。内28社は持続可能な調達などより広範なもののなかにアニマルウェルフェアを含み、それを明示しています。4社はアニマルウェルフェア自体が重要課題として設定されています。うち2社は動物性タンパク質の利用割合が高い企業であり、アニマルウェルフェアを重要課題に特定していることは動物への配慮と責任を果たす姿勢として評価できるものです。一方で、動物性タンパク質の利用割合が非常に高い企業であっても、重要課題に特定していない企業もありました。

アニマルウェルフェアの調達基準などポリシーを持つ企業は23社、21.5%でした。これら23社のポリシーは、アニマルウェルフェアの5つの自由を推進する立場を取るといった内容が規定されて具体的な施策には踏み込んでいない企業が多くを占めます。

アニマルウェルフェアについての社内研修を行っている企業は10社、9.3%にとどまっています。企業に調達方針がありつつもその内容や意義を勉強する機会がない場合、企業としての価値をあげる機会を逃す可能性があります。営業や調達などの現場でのアニマルウェルフェアの知識を積み上げる取り組みが求められます。

自社が利用する畜産物・水産物について、農場や屠畜場まで遡って動物のアニマルウェルフェアの状況を把握することができるよう、トレーサビリティを確保しているかどうかは41社、38.3%で何らかの取り組みがありました。しかし、努力をしているレベルに留まり、トレーサビリティが一部でも確保できていると表明する企業は2社のみでした。


豚肉に関する施策

豚肉分野では、妊娠ストール問題への対応が焦点となりますが、施策を持つ企業は9社、8.4%にとどまりました。約9割の企業が、妊娠ストール問題など主要課題への明確な方針を示していません。

何らかの取り組みがある企業は、食肉企業と総合商社であった点が特徴的です。総合商社は、子会社に食肉企業を抱えておりそのため取り組みがあったケースと、海外からの調達を商社自体が行っておりその取り組みに妊娠ストールフリーが含まれていたケースがあります。

主要食肉企業の取り組みが進んできている中で、消費者と接する立場である商流の下流にある小売、外食分野での取り組みが少ないことは課題と言えます。

国際的には妊娠ストール廃止は決して生産者の話ではなく、またすでに標準化が進んでおり(国際的には企業の一般的な妊娠ストールフリーへの移行期限は2026年)、日本は大きなギャップを抱えています。

卵(採卵鶏)に関する施策

卵分野は24社、22.4%が何らかの取り組みがあり、他の畜産水産物に関する取り組みの中では比較的高い水準ですが、それでも約8割の企業は具体的施策を示していません。国際的にはケージフリー移行が標準化しつつある中、日本市場とのギャップは依然として大きいと言えます。また、

  • 具体的な期限を伴わない宣言
  • 調達比率の未公表
  • 消費者ニーズに応じた消極的取り組み

といった課題も顕著です。

国際的には食品企業の多くが移行期限を示しつつ100%ケージフリー移行を公表しているのに対し、日本では依然として遅れが目立ちます。例えばBBFAWの評価では、部分的であったとしても具体的な期限を伴わない宣言と実施の証拠がなければ評価点を得ることはできません。


鶏肉(ブロイラー)に関する施策

鶏肉分野は最も対応が遅れており、施策を持つ企業は4社、3.7% にすぎません。95%以上の企業が、飼育密度や屠畜時の事前意識喪失といった最低限の基準を提示していない状況です。

欧州で広がるBetter Chicken Commitmentに相当する枠組みはもちろんのこと、成長速度の速い品種への切り替えや、環境エンリッチメントなど国際的に広がる動きは日本では確認されませんでした。


水産養殖に関する施策

水産物に関する施策を持つ企業は 9.3% でした。持続可能性認証(ASC等)への言及は一定数確認されましたが、魚類の福祉(屠殺方法、養殖密度等)に踏み込んだ方針は限定的です。

水産物については、畜産物と異なり国内でも第三者認証が定着し始めており、それら認証の中にアニマルウェルフェアが一定程度担保されています。エビの場合はGlobal GAP、ASC、BAPで眼柄切除の改善が進んでおり、他の魚種でではASC認証のアニマルウェルフェア基準が近年上がっています。実際、一定水準以上の水産認証を取得していることで、眼柄切除の課題への対応が可能となっている企業が2社ありました。

一定水準以上の水産認証を取得することがアニマルウェルフェアを向上させることにつながるため、企業にとっては取り組みやすい分野でもあり、今後の大きな改善余地が残されています。


代替タンパク質への取り組み

重要課題に代替タンパク質への取り組みを入れている企業は16社、15%でした。環境課題との関係もある取り組みですが、持続可能な社会が求められるなかでは少ない印象があります。食糧問題としても、アニマルウェルフェア同様に早急な着手が求められます。

代替タンパク質に関する施策を持つ企業は 59社、55.1% と最も高い割合でした。また、代替乳製品に対する施策を持つ企業も41社、38.3%と高い割合です。ただし、これらは商品展開や部分的取り組みを含む数値であり、戦略的なタンパク質転換目標を明確に掲げている企業は限られます。また動物福祉との統合戦略という観点では、まだ発展段階にあります。

国際的にはタンパク質転換戦略(Protein Diversification Strategy)を明確に掲げる企業が増加しており、日本との差が見られます。


総括

総じて、日本企業におけるアニマルウェルフェア対応は、

  • 豚肉分野は食肉企業がリード
  • 卵分野で多少の動きがあるが、外資系企業の海外でのコミットメントがリード
  • 鶏肉分野で大きな遅れ
  • 水産分野は未成熟
  • 代替タンパク質は戦略化不足

という構造が見られます。

また、理念レベルの表明は増えている一方で、実施・監査・進捗開示といった「制度化」の段階には至っていない企業が多数を占めています。

世界では、

  • ケージフリー移行
  • ストール廃止
  • BCC採用
  • タンパク質転換目標

が企業標準になりつつあります。日本企業は、宣言段階から制度段階への移行において明確な遅れがあります。

FARMWISE Impact 2026は、日本企業におけるアニマルウェルフェア対応の構造的ギャップを明らかにしました。

理念から制度へ。
部分対応から全社戦略へ。
国内基準から国際水準へ。

今後、日本企業が国際社会における責任を果たすためには、構造的かつ継続的な改善が求められます。


免責事項:サイトやデータをご利用になる際には必ずご確認ください

このページをシェアする